公募研究
ダウン症候群に伴う急性巨核球性白血病(ML-DS)発症の過程で起こる多段階の遺伝子変異を解明し、細胞分化における運命決定メカニズムを明らかにすることを目的として本年度は以下の研究を進めた。寛解時の検体が揃っているダウン症候群のTAMとAMKLの25組(TAM 15例、AMKL 14例)の検体を用いて、全エクソンシーケンス解析を行った。今回の解析に用いた検体の内、4例はTAMとAMKLの両時期の検体が揃っていた。同一患者の寛解時検体から得られたデータと比較することで腫瘍細胞特異的な変異を同定した。サンガーシーケンスあるいはデイープシーケンスで確認できた変異数は129個であった。GATA1以外の変異数は平均してTAMでは0.7個、AMKLでは4.8個とAMKLで多い傾向にあった。注目すべきことに、DNA修復や転写調整に関わる同一経路 (pathway X) の分子をコードする遺伝子の変異が64%の症例で繰り返し認められた。全エクソン解析の結果を確認するために、109例(TAM 41例、AMKL 49例、非ダウン症のAMKL 19例)に患者サンプルを増やしてターゲット・デイープシーケンス解析を行った。その結果、55%のAMKLにpathway Xの遺伝子変異が検出され、変異に重複が見られなかった。一方、TAMでは変異が見つかったのは41例中1例 (約2%)のみで、非ダウン症のAMKLでは19例中2例(約10%)であった。Tyrosine kinases あるいはRas pathwayの遺伝子変異は、AMKLでは41%、非ダウン症の AMKLで32%と両者に有意な差が認められなかった。TAMでは、41例中5例(12%)に変異が検出された。エピジェノム制御に関わる遺伝子変異は、AMKLでも非ダウン症のAMKLでも約20%に認められたが、TAMではほとんど検出されなかった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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