研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23118503
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
千葉 滋 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60212049)
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キーワード | 癌 / 細胞・組織 |
研究概要 |
造血前駆細胞におけるHes1の可逆的短時間発現変動の発見:造血前駆細胞におけるHes1の発現変動を詳細に解析するため、Hes1プロモーター下でユビキチン化ルシフェラーゼ(Ub-luc)レポーターを発現するトランスジェニック・マウスを用い、個々の細胞におけるUb-luc発現をタイムラプス観察した。胎仔肝KSL細胞を培養開始後、一部の細胞で時間経過とともにUb-lucが一過性に強く発現し、その後発現が減衰する現象が観察された。さらに、Ub-lucの一過性発現が観察された細胞の一部では、時間経過とともに再びUb-lucが一過性に発現した。これらのUb-lucの一過性発現の周期は、細胞間で差が大きいものの、概ね2時間前後であった。以上から、一部の造血前駆細胞でHes1の短周期的発現変動(ultradiation oscillation)が確認された。 Hes1ノックアウトマウス胎仔肝造血細胞の解析:造血前駆細胞および造血幹細胞においてHes1が果たす役割を解明するため、Hes1ノックアウトマウス胎仔肝細胞のコロニー形成能、および同系マウスに移植後の造血再建能を観察した。その結果、コロニー形成能、移植後造血再建能とも異常なく、Hes1は正常造血において重要な役割を果たしていないと推察された。一方、マウス胎仔肝造血前駆細胞にMLL融合遺伝子を導入して移植することで急性骨髄性白血病(AML)を発症させるモデル実験系において、Hes1が欠損することによりAMLの発症が有意に早くなること現象を見いだした。このことは、Hes1がMLL融合遺伝子に誘導されるAML発症を抑制していることを示唆している。 今後、Hes1の短周期的発現変動が、AML発症抑制に関わるかについて検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
造血前駆細胞におけるHes1の可逆的短時間発現変動の発見したことや、Hes1が急性骨髄性白血病発症を抑制することを発見したことから、概ね順調な進展といえる。Hes1が可逆的短時間発現変動している造血前駆細胞を同定するところまで達成できれば、さらに望ましかった。
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今後の研究の推進方策 |
・Hes1の短周期的発現変動が、AML発症抑制に関わるかについて検討する。 ・ヒト骨髄系造血器腫瘍細胞において、Hes1の短周期的発現変動に異常があるかを検討する。
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