公募研究
本研究では、これまでに知られているRUNX1関連転座や遺伝子変異以外の新たなRUNXファミリー因子異常による造血器腫瘍の発症メカニズムを明らかにすることを目的とする。特に、エピジェネティック異常に基づく遺伝子発現の違いに注目し、新たな造血幹細胞分化制御機構の解明を目指す。そこで本年度は、造血器腫瘍患者における遺伝子異常の検出と病態との関連の解析を行った。まず、倫理審査委員会の承認および患者本人の承諾を得て造血器腫瘍(主に骨髄異形成症候群MDS、急性骨髄性白血病AML、骨髄増殖性腫瘍MPN)症例を集積し、DNAおよびCD34陽性細胞のRNAの抽出を行った。DNAを用いてRUNX1およびRUNX3の変異解析を行い、CD34陽性細胞RNAを用いてRUNX1アイソタイプの定量およびRUNX3の定量を行った。RUNX3ノックアウトマウスがMPNを発症することから、MPN症例ではRUNX3変異が認められるのではないかと予測していたが、残念ながら機能的ドメイン内の変異は認められなかった。そこで発現量の低下が認められるのではないかと予測し、CD34陽性細胞での定量を行ったが、一部低発現症例が認められたものの、逆に高発現の症例を多く認めた。特に、臨床病態において病勢とRUNX3高発現に相関がみられた。このことから、当初の予測に反し、RUNX3の高発現がMDS/AMLの発症・進展に関与する可能性が示唆された。また、RUNX1アイソタイプ毎の発現定量を行った結果、短躯型アイソタイプが高値である症例も一部認められ、臨床病態との関連が示唆された。以上の結果より、遺伝子変異を伴わない発現量の変化が腫瘍原性作用を持つ可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた患者サンプルを用いた解析は、おおむね行うことができた。但し、得られた結果は予想していたものとは逆であったため、今後の確認実験の手法変更が必要となった。
RUNX3高発現による造血器腫瘍原性効果を検討するため、ヒト造血幹細胞やマウスへの導入実験を行う。
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