研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23118519
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
瀧原 義宏 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (60226967)
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キーワード | 造血幹細胞 / ポリコーム複合体1 / Hoxb4 / Geminin |
研究概要 |
造血幹細胞は、自己複製し造血幹細胞そのものを生み出すともに、一方では分化し十種類以上にも及ぶ成熟血球細胞を産生し続ける。研究室ではまず造血幹細胞の活性を支持する2大内的因子であるポリコーム複合体1やHoxb4が供にDNA複製制御因子Gemininに対するE3ユビキチンリガーゼとして機能していることを独自に明らかにした。Gemininは細胞の増殖と分化を同時に制御する分子機能を有することが知られていることから、Gemininが造血幹細胞の自己複製と分化の誘導を掛け分ける中核因子として機能していることが考えられる。そこで、Geminin遺伝子に蛍光タンパク質遺伝子EYFPをノックインし、Geminin-EYFP融合タンパク質が発現するようにしたGeminin-EYFPノックインマウスを作製するとともに、ホモ接合型Geminin-EYFPノックインマウスの胎仔線維芽細胞からiPS細胞を作製した。また、レトロウイルスベクーやGeminininに対するshRNAを用いてGemininの発現を自在に操作できる実験系の開発を行った。そして、これらを駆使することによってGeminin量を操作することによって、造血幹細胞の活性を操作できることを明らかにした。そこで、次にGemininの発現が造血システムやiPS細胞の増殖と未分化性の維持にどのように具体的に機能しているのか、さらにGemininの発現によって幹細胞性がどのように支持されているのかを分子レベルで明らかにし、細胞の増殖と分化を掛け分ける分子基盤について理解を深める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Geminin-EYFPノックインマウスの作製、そのホモ接合型胎仔線維芽細胞からのiPS細胞の作製、そして、Gemininの発現量を操作するための高発現ベクターやshRNAを用いたノックダウンベクターの作製を完了するともに、Gemininの発現操作による造血幹細胞の活性制御法の開発やさらにE2FによるGeminin遺伝子の転写制御へのGemininタンパク質の直接的関与の解析等、おおむね順調に研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに作製準備したものを駆使し、Gemoninの発現レベルを操作することによって造血幹細胞の増幅と分化を制御し、Gemininの分子機能を明らかにする計画である。特別に問題点はないが、造血幹細胞の機能解析には造血幹細胞移植を行ってその活性を確認することが必須であり、解析が長期間に渡る。そこで、迅速な研究の推進を心掛ける計画である。
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