研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23118523
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
森下 和広 宮崎大学, 医学部, 教授 (80260321)
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キーワード | 造血 / 神経 / 分化 / EVI1 |
研究概要 |
(1)造血幹細胞維持・骨髄細胞分化に関わるEVI1の機能解析 EVI1により制御される遺伝子群をCHIP sequenceと遺伝子発現により数十遺伝子絞り込んだ。その中の代表例として、ITGA6、プロモーター解析を行った。ITGA6にはGATA2並びにEVI1が、GPR56にはEVI1の直接関与による転写制御を同定した。またAng1について、EVI1高発現白血病細胞での高発現は細胞増殖への阻害ならびにGO期細胞の維持に関連しており、Ang1発現阻害によるGO期細胞集団の低下、並びに細胞増殖能の亢進を認めた。さらにGPR56発現抑制白血病細胞の作成により、増殖能の低下、アポトーシスの亢進、細胞接着能の低下を来たした。GPR56欠損マウスは骨髄幹細胞数の低下と、髄外造血亢進を来たし、骨髄ニッチへの接着性低下を引き起こしていた。 (2)神経幹細胞維持・神経細胞分化に関わる機能解析 a)マウスES細胞(MEB5)を用いた細胞系で、Neurosphereからの神経分化系において、EVI1遺伝子はグリア細胞への分化を抑制し、神経細胞への分化に促進的に関与し、神経軸索伸張に関わることが示唆された。b)3例の神経膠芽腫患者由来gliomainitiating cellsを単離培養樹立した。この細胞系でもEyI1は発現しており、shEVI1導入によりSox2、Musashil、Nestin発現が低下し、幹細胞性の消失,グリア細胞マーカーの低下が見られた。同じくEVIl遺伝子発現抑制によりNotch signal系の発現の低下が見られ、Notch情報伝達系を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)造血幹細胞維持・骨髄細胞分化に関わるEVI1の機能解析においては、標的遺伝子群を明らかにし、調節機構がわかってきた。またGPR56欠損マウスの解析が順調に進み、幹細胞維持との関連性が明らかになった。(2)神経幹細胞維持・神経細胞分化に関わる機能解析においてEVI1が神経幹細胞維持に必須で有り、またNotch情報伝達系に関わることがわかり、また神経細胞分化、神経軸索伸張に重要である事がわかった。
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今後の研究の推進方策 |
問題点としては、造血においても神経においてもconditional KOマウスの掛け合わせがうまくいかず、成体脳におけるEVI1欠損の影響がまだ実験できていない点である。時間の関係上、すでにあるEVI1欠損マウスで胎児期脳を用いたアッセイ系を構築中である。glioma initiating cellsを用いてさらに分子生物学的検討を行っていく。EVI1ファミリーである、MEL1欠損マウスの神経幹細胞異常についても検討を進めているし、また同時に、ショウジョウバエにおけるEVI1ホモログ欠損を引き起こし、神経細胞分化や、軸索伸張の検討も構築中である。
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