1)血液細胞におけるHDAC発現とその制御機構の解明:①正常造血幹細胞/前駆細胞(CD34陽性骨髄、臍帯血単核細胞)においてHDACの発現はきわめて低く、特に蛋白レベルでは検出限度以下であった。一方、committed progenitors(CD34陰性骨髄単核細胞)においては発現が認められたが、顆粒球・単球では再度発現が低下した。この発現パターンはin vitroの培養系でも再現された。②急性白血病においてHDACの強発現を認めた。HL-60、U937を顆粒球ないし単球系に分化させると、HDACの発現は著明に低下した。一方、K562を赤芽球・巨核球系に分化させた場合は、HDACの発現は抑制されなかった。 2)造血幹細胞におけるHDACの機能と白血化への関与の解明:①純化した造血幹細胞にHDAC1を強発現させたが、明らかな増殖の促進は認めなかった。②C57BL/6(Ly-5.1)マウス由来の造血幹細胞(c-Kit陽性細胞)にレトロウイルスを用いてHDAC1を発現させ、放射線照射したC57BL/6(Ly-5.2)マウスに移植した。現在、約9か月の観察であるが、HDAC1発現群において有意の白血球減少が認められている。一方、赤血球数、血小板数は対照群(Mock)、無処置マウスと差を認めていない。 3)幹細胞性(stemness)の維持におけるHDACの役割:HDACがmicroRNAのプロセシングに関与する因子であるDGCR8を脱アセチル化し、primary microRNA transcriptの切断を促進することを見いだした。この現象は造血幹細胞におけるmicroRNA発現の制御に関与していると考えられ、stemness維持との関連が推察される。
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