研究領域 | 多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23118527
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田久保 圭誉 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50502788)
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キーワード | 巨核球 / 造血幹細胞 / ニッチ / 低酸素 / 血小板 |
研究概要 |
本研究では、巨核球の分化・成熟過程における新規シグナルの同定を目指す。特に巨核球前駆細胞から巨核球への分化、そして血小板産生に至る一連の分化過程におけるHIF-1αと、その分解を誘導するVHL/Phdの効果について検討する。また同時に未分化前駆細胞から巨核球への分化過程の経時的なトランスクリプトーム解析を行うことで新たな巨核球分化制御因子を同定する。本解析には新規に作成した純化した巨核球前駆細胞からin vitroで巨核球分化を高効率に誘導できるシステムを用いることで、巨核球分化過程の新規制御機構の解明を図る。 本年度はまずFACSを用いて巨核球前駆細胞を単離し、ファイブロネクチンで表面をコートしたディッシュ上でサイトカインSCFとTPOを含む無血清培地で培養することで巨核球を誘導し、さらにproplateletも効率よく誘導可能であることを確認した。さらに、レトロウイルスベクターを用いて遺伝子発現を改変した造血前駆細胞でもこのシステムで巨核球へと分化誘導することが可能であることを確認した。この巨核球誘導法を用いて巨核球前駆細胞から巨核球終末分化における過程で起こるトランスクリプトームの変動を検討するためにマイクロアレイで経時的なサンプリングを行った。この際、proplateletを誘導することが知られているROCK阻害剤を添加した巨核球前駆細胞培養時のトランスクリプトーム変化を比較することで、巨核球分化と、血小板放出過程双方、あるいは片方のみに寄与する遺伝子の同定を図り候補遺伝子セットを得ることができた。定量的PCRや免疫染色に基づいた検討を行い、責任遺伝子候補の絞り込みを完了した。現在候補遺伝子の機能解析を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに巨核球前駆細胞から巨核球への分化誘導システムを用いてトランスクリプトーム解析を完了した。解析結果を基に確認実験を行い新規巨核球・血小板分化因子候補遺伝子セットの同定を完了した。さらにレトロウイルス感染システムと本分化誘導システムを組み合わせて遺伝子発現を操作した細胞にも巨核球分化を誘導する方法論を確立することができている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に同定した候補遺伝子の機能解析を進める。さらに、候補遺伝子の発現にHIF-1制御系の関与するかどうかノックアウトマウスや低酸素培養も用いて検討を進める。これらによって新規の巨核球・血小板分化制御シグナルの同定を図る。
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