2年度にわたる本研究では、巨核球の分化・成熟過程における新規シグナルの同定を目指した。特に巨核球前駆細胞から巨核球への分化、そして血小板産生に至る一連の分化過程における低酸素ニッチで機能する遺伝子セットの効果について検討した。また同時に未分化前駆細胞から巨核球への分化過程の経時的なトランスクリプトーム解析を行うことで新たな巨核球分化制御因子を同定することを目指した。本解析には新規に作成した純化した巨核球前駆細胞からin vitroで巨核球分化を高効率に誘導できるシステムを用いることで、巨核球分化過程の新規制御機構の解明を図った。 本年度は前年度に引き続いてFACSを用いて巨核球前駆細胞を単離し、ファイブロネクチンで表面をコートしたディッシュ上でサイトカインSCFとTPOを含む無血清培地で培養することで巨核球を誘導し、さらにproplateletも効率よく誘導するシステムの向上を図った。また、前年度までに同定した巨核球終末分化誘導遺伝子セットの解析を行い、定量的PCRや免疫染色、ウイルスベクターを用いた強制発現や低分子化合物によるシグナル抑制実験を行い、新たな巨核球終末分化で機能する関連シグナルの同定を行った。さらに、骨髄において、造血幹細胞と巨核球がニッチで共存していることを見出した。
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