平成24年度の研究計画に基づいて,以下の研究を実施した。まず,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)による好中球分化において必須な役割を果たす転写因子C/EBPαの活性制御におけるATP依存性クロマチン再構成複合体(BRG1/BRM複合体)の機能について解析した。BRG1/BRM複合体の各構成分子とC/EBPαとの相互作用を免疫沈降によって解析した結果,細胞内で C/EBPαがBAF155/170を介してBRG1/BRM複合体と会合することを確認した。 また,C/EBPファミリーに属するC/EBPγが好中球前駆細胞においてC/EBPαとヘテロ二量体を形成して標的遺伝子(CCR2遺伝子)のプロモーター領域に結合することを見出した。C/EBPγは転写活性化ドメインを有しておらず,好中球前駆細胞においてC/EBPγを高発現させるとG-CSFによる標的遺伝子の発現誘導が抑制されることから,C/EBPγがC/EBPαの活性を負に制御することが示唆された。今後は,C/EBPγの作用を詳細に解析することが重要であると考えられる。他方,p400/mDominoのコンディショナルノックアウト(CKO)マウスを用いて造血細胞以外でp400/mDominoが機能する組織の解析を試みた。骨髄移植によって造血機能を補完したp400/mDomino-CKOマウスは造血機能の回復によって生存期間の延長が認められたものの、遺伝子欠失後3週間以内には全てのマウスが死滅した。各臓器の障害について解析した結果,肝臓の実質細胞が顕著な障害を受ける可能性を見出した。p400/mDominoが肝細胞の生存や機能の維持に働くことはこれまで報告されておらず,本研究で初めて明らかになった。
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