公募研究
真核生物の繊毛運動の基礎はモーター蛋白質・ダイニンによる微小管の滑り運動である。ダイニンの活性は繊毛の中心構造(中心小管・スポーク)により制御されると考えられているが、その機構の詳細はわかっていない。繊毛中心構造を欠失したクラミドモナス変異株は屈曲運動できないが、最近私たちは、繊毛蛋白質の水和状態を変化させるとその変異株に屈曲運動が誘導されることを見出した。私たちは、屈曲開始には適切な大きさの軸糸直径が重要であるとする仮説を提出している。すなわち、繊毛中心構造を欠失すると軸糸直径が変調されて屈曲運動が生じないが、水和状態を変化させると変異株の直径が野生株並みに回復して屈曲運動が誘導されると考えた。本研究では、この仮説を検証するために、屈曲の開始前後にそのような軸糸直径変化が生じるかをX線繊維回折により調べた。その結果、 変異株の直径はATP 存在下に野生株に比べて 2-3 nm 小さいこと、変異株の屈曲誘導条件では直径が 1 nm 程度広がることがわかった。一方、ダイニン制御複合体(DRC) と呼ばれる構造の欠損株では ATP 存在下に野生株よりも直径が 3-4 nm 大きく、中心構造欠失株とは逆の変化を示すことも明らかとなった。DRC 変異株はサプレッサー変異株と呼ばれるものの一つであり、中心構造欠失株との二重変異株では繊毛の運動性が回復する。運動能をもつ二重変異株の軸糸直径を測定したところ、直径は中心構造欠失株のものよりも大きく野生株と同程度であることが分かった。以上の結果は、屈曲運動の開始には最適なダイニン・微小管相互作用距離(直径)があることを強く示唆している。DRC は軸糸微小管同士をつなぐ架橋因子であることが電子顕微鏡による解析から示唆されている。DRC は軸糸直径を縮める機能をもち、繊毛中心構造と拮抗してダイニン・微小管相互作用を制御しているものと考えられた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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