研究概要 |
F1-ATPaseはATP加水分解反応に共役して回転する分子モーターであり、回転と化学共役反応は様々な変調手法によって詳細に調べられてきた。本研究課題では、研究代表者が開発した高圧力顕微鏡を利用し、(Nishiyama and Sowa, Biophys J.(2012))、F1-ATPaseの水和状態を変えることでぐ回転運動の変調と可視化を行う研究に取り組んだ。高圧チャンバー内で、Fl-ATPaseのγサブユニットにビーズを取り付け、回転を可視化できる実験系を開発し、回転計測を行った。その結果、圧力め増加と共に、F1-ATPaseの回転速度が低下したものの、1気圧に減圧した後では、再び回転速度が回復した。これは、圧力に対して、F1-ATPaseの速度が可逆的に変化することを意味する。様々なATP濃度、および、圧力値における回転速度について、ミカエリスーメンテンの式で解析したところ、圧力の増加と共に、Vmaxが低下し、Kmが増加することが明ちかになった。次に、どの反応過程が圧力によって律速になっているかを同定するため加水分解反応の遅いミュータント[F1(βE190D)]を用いて実験したところ、高圧力下では、ATP結合反応過程が阻害され、回転速度の低下を招いていることが判明した。これらの結果から、F1-ATPaseの回転速度が阻害されるのは、1)ATP結合反応、2)ADP解離、もしくは、3)両反応過程、以上三つのうちのどれかであると考えられる。
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