研究概要 |
アクチンフィラメントは多量のハイパーモバイル水分子の存在が知られている例外的な分子集合体であり、ミオシン頭部(S1)と相互作用する。私達はクライオ電子顕微鏡像から5オングストローム分解能でアクチンフィラメントの立体像を再構成し、原子モデルの構築に成功した(Murakami et al.(2010)Cell,143,275-287)。アクチン重合で活性化されるATPase反応では、2個の水分子が重要な役割を演じる。アクチンの疎水ポケット前半分はミオシンなどのタンパク質との結合部を形成しており、後半分は次に結合するアクチンのDループが結合する。また疎水ポケットの前半分の疎水的側鎖が溶媒に露出する。今回明らかにした構造を踏まえ、ATPaseが変調された変異アクチンや重合能が低下した変異アクチンを利用し水和・脱水和・電場、ATPaseのサイクルにおける水分子の役割を更に明らかにする。アクチン分子の前面下部には、疎水ポケットの入り口があり、ミオシンを初めとするアクチン結合タンパク質の結合部を形成している。重合すると、疎水ポケットの前半分がよりオープンとなり、疎水的側鎖が溶媒に露出する。その意義を更に明らかにするために、疎水ポケットの前半に変異を入れたアクチン分子については、X線結晶学によって水和水を含めた高分解能構造解析を行い、疎水ポケットがアクチン重合とATP分解反応に果たす役割と水分子の関係を明らかにする。
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