研究領域 | 水を主役としたATPエネルギー変換 |
研究課題/領域番号 |
23118716
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高野 光則 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40313168)
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キーワード | 分子モーター / アクトミオシン / アロステリック応答 / 静電相互作用 / 分子動力学シミュレーション / エネルギー変換 |
研究概要 |
アクチン-ミオシン間の強結合→弱結合転移の分子機構解明のため、explicit水中での長時間MD計算を行い、ATP結合によって誘起されるミオシンのアロステリック応答を追跡した。ミオシンのドメイン運動的な構造変化に加え、表面の構造状態(表面ループと水和状態)の応答を検知することができた。水和状態についてはミオシン周囲の水の密度、密度ゆらぎ、配向(サイトダイポール場)を解析し、ATP結合でアクチン結合領域周辺の親水性が増す傾向を検知した。これらの一連のアロステリック応答が強→弱結合転移を誘起していていると考えられる。一方、アクチン・ミオシン複合体系の粗視化MD計算によってアクチン-ミオシン間の結合定数を半定量的に再現できることを示し、静電相互作用と水の誘電率の重要性を指摘した。関連してミオシン周囲の局所誘電率の解析に取り組んだ。さらに、強結合状態でのレバーアーム・スイングの自由エネルギー計算を行い、レバースイングに伴う自由エネルギー変化が小さいこと(レバーup状態の方が安定)、エネルギー変化が小さい理由はレバースイングに伴うミオシン分内、ミオシン-水間での静電相互作用ネットワークの組み替えによることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミオシンについて、ATP結合に誘起されるアロステリック応答を高い統計精度で検知することでき、強→弱結合遷移の分子機構が見えてきた。また強結合状態におけるミオシンのレバーアームスイングの自由エネルギー計算も進み、当初の研究目的を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
ATP結合によって誘起されるアロステリック応答の物理的な解明(静電相互作用に注目)、および弱→強結合(アクチン結合領域の構造変化)とレバーアーム・スイングのアロステリック連関の解明。
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