水中におけるミオシンの長時間分子動力学シミュレーションを行い、ATP結合によって誘起されるミオシンのアロステリック応答を研究した。表面に生じる分極電荷とアクチン結合領域近傍にあるループ領域の応答を解析により、ミオシンがアクチンとの結合親和性を制御する分子機構についての新しい描像をえることができた。また、ミオシン周囲の水の物性、およびATP結合による影響の解析から、アクチンとミオシンの結合に水が積極的に関与している様子がうかびあがってきた。一方、アンブレラサンプリングを用いたミオシンの自由エネルギー計算からは、ミオシンのレバーアーム部位の変化により分子内の電荷分布の変化が誘起されることが示された。この応答もアクチンとの結合親和性の制御に重要であると考えられた。レバーアーム部位の構造変化を反応座標にとって計算した自由エネルギープロファイルもふまえて、アクトミオシンのエネルギー変換機構(力発生機構)について静電相互作用を基軸にした全体像を構築することができた。
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