地球の温暖化など地球環境の破壊が問題となっている昨今、環境ストレスと生物の関係はどうなっているのか?そのような課題から環境の変化がもたらす影響について研究を行った。その結果、環境の変化が植物の進化に積極的な影響力を持つことをはじめて実証した。環境ストレスである高温ストレスを植物に与えると転移因子(トランスポゾン)が活性化し、その子孫でトランスポゾンの挿入によるゲノム構造の変化が起ることを見つけた。このことはゲノム構造の変化によって引き起こされる様々な変異の中から環境ストレスに対する耐性を獲得した植物が誕生する可能性を示唆している。本研究は環境ストレスが植物に与える影響について「ゲノム構造の変化と環境適応」という側面からアプローチし、ストレス条件下で活性化するトランスポゾンとそれを制御する宿主側の遺伝子の解析を行うことにより大地・大気環境の変動に対処するために植物がもつ巧妙な生存戦略について理解し、最終的には実際にストレスにより活性化するトランスポゾンを用い植物のゲノム構造を変化させ環境適応能力を獲得した個体を作り上げることを目的とした。研究成果として、熱ストレスによりトランスポゾンの転移が引き起こされた集団からABAストレス耐性個体を同定し、その原因となる挿入先を次世代シークエンサーを用いたゲノム解析により明らかにした。マイクロアレイの解析結果から、ABAストレスで活性化するいくつかのトランスポゾンを同定した。トランスポゾン挿入領域のエピジェネティックな修飾の変化を解析するため、ヒストンH3K9やH3K4の抗体を用いた免疫沈降実験を行った。
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