研究実績の概要 |
低温は、迅速に対応しなくてはならない主要な環境ストレスのひとつである。本研究ではマイクロアレイと転写阻害剤処理を組み合わせた“mRNA-decay array”によって,低温ストレスに応答してmRNA分解速度が大きく変化している遺伝子群を明らかにした。本年度は,mRNA-decay arrayの詳細な解析によって得られた知見を,論文として取り纏めて発表した (Chiba et al., 2013)。一方で,低温ストレスに応答して発現レベルを上昇させ,かつ不安定化される遺伝子群,なかでも低温ストレス応答に重要な転写制御機構であるCBFレギュロンの下流に位置する7つの遺伝子に焦点を絞り個別解析を行った。これらの遺伝子は,いずれも低温ストレスに応答してその発現レベルを上昇させるが,その上昇パターンは遺伝子により多様であることを見出した。発現の上昇にはCBFによる転写制御が関わっていることが明らかであり,同時にmRNAは不安定化されていることから,このような低温ストレスに応答した様々な遺伝子発現の変化パターンは転写と分解の協調制御によって実現されていると考えられる。各遺伝子の構造のうち,転写制御はプロモーター部位によって行われていると考えられるが,mRNA分解の制御に重要な領域はよくわかってはいない。実際に,低温ストレスに応答したmRNA分解制御に関わる遺伝子部位を決定するために,様々な部位をレポーター遺伝子に繋いだコンストラクトを作成した。当初はこれらの融合遺伝子を一過的発現系で発現させて,低温処理後の発現変化パターンを比較することにより,各遺伝子部位の役割評価する予定であったが,様々な実験条件を試みたにも拘らず,この方法が技術的に大変難しいことが明らかとなった。そこで,T87培養細胞を形質転換させることにより,これらの融合遺伝子の発現を調べるために,形質転換体の作成を進めた。
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