研究実績の概要 |
本研究では真核生物に普遍的に備わる細胞自己分解システム「オートファジー」が、植物の栄養飢餓応答に果たす役割についてモデル植物であるシロイヌナズナを中心材料に分子レベルで明らかにすることを目的とした。本年度は特に以下の2項目について成果が得られた。 1)光合成制限環境下におけるエネルギー供給源としてのRCB/オートファジーの役割 葉や個体レベルでの栄養条件を様々な外的、内的条件で変化させ、それらが小胞RCB(Rubisco-containing body)の形成に及ぼす影響について調べた。その結果、RCBの形成は葉の炭水化物含量と特に密接に結びついていることが示された。そこで、炭素制限環境におけるRCB/オートファジーの役割について解析するため、オートファジーとスターチ代謝関連遺伝子の二重変異体の解析を進めた。スターチレス/オートファジー二重変異体では、短日条件において顕著な生育遅延が起き、生殖成長に至る前にほとんどの葉が枯死するというシビアな表現型が見られた。二重変異体では分岐鎖アミノ酸や芳香族アミノ酸含量が低下しており、これらアミノ酸の分解代謝に関わるIVDHやETF/ETFQO複合体のETFQOの遺伝子発現はスターチレス変異体や二重変異体で顕著に上昇していた。以上のことから、オートファジーが、炭素制限時にこれらアミノ酸分解代謝へのアミノ酸供給系として機能していることが示唆された。(Izumi et al., 2013, Plant Physiol.として発表 )。 2)葉の老化時のRubisco分解におけるRCB経路の貢献度の評価 RBCSと蛍光タンパク質(sGFP, mRFP)の融合タンパク質を発現する形質転換体を用いてRCB経路を定量評価する系を確立した。(Ono et al., 2013, Plant Cell Environ.として発表)。
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