公募研究
本研究では、植物における栄養生殖の分子メカニズムを解明することを目標とし、苔類ゼニゴケをモデルとして、栄養生殖制御の鍵因子の単離と機能解析、そして栄養生殖プロセスにおけるオーキシンの役割について解析する。また領域内において、基部陸上植物のゲノム情報と分子遺伝学のリソースに基づいた研究協力を推進することにより、ゲノム進化的な観点から植物ストレス応答の包括的な理解に貢献することも目指している。本年度は、ゼニゴケにおけるゲノム解析の進展に加え、相同組換による遺伝子破壊法を開発し、分子遺伝学の基盤整備が進展した。これらの進展により、本研究の進展を直接早められるだけでなく、一般的な意味でのゼニゴケ発生メカニズムに関する知見の蓄積がさらに拡大され、本研究の進展に間接的にも寄与すると考えられる。本年度は、栄養生殖におけるオーキシン機能について、重点的に解析した。これまでの結果より、杯状体の基底部におけるオーキシン生合成系の活性上昇に伴うオーキシンの蓄積が栄養生殖器官の発生に寄与してい、ると考えられる。これらの結果を受け、栄養生殖器官の発生制御におけるオーキシンシグナル伝達系の役割について解析するためにオーキシン低感受性変異体の単離と解析を進めた。計算上200,000株のT-DNAタグラインから10株のオーキシン低感受性変異体を単離した。10株のオーキシン低感受性変異体めうち、6株で杯状体もしくは無性芽発生に異常が観察された。2株のオーキシン低感受性株mt4とmt7については、無性芽発生における分裂組織の形成と機能に異常が確認された。さらに両変異体でAUXIN RESPONSE FACTOR(ARF)の相同遺伝子MpARF1のタンパク質コード領域にT-DNAの挿入が確認された。今後mt4、mt7について、さらに解析を進め、栄養生殖プロセスにおけるオーキシン機能を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
本研究におけるモデルである苔類ゼニゴケのゲノム解析や遺伝子機能解析手法の基盤が整えられ、本研究計画がスムーズに進行している。
オーキシン低感受性変異体の解析に力を入れ、またオーキシン生合成遺伝子の発現や機能制御についても着目し、栄養生殖プロセスにおけるオーキシンの役割を明らかにする。それらの研究成果をまとめる。栄養生殖異常変異体については、スクリーニングを遂行するとともに、既に単離されている株について変異原因遺伝子の同定を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (14件) 備考 (1件)
Journal of Plant Research
巻: (in press)(印刷中)
10.1007/s10265-012-0477-7
Plant Physiology
巻: 157 ページ: 55-59
10.1104/pp.111.182188
Trends in Plant Science
巻: 16 ページ: 489-498
10.1016/j.tplants.2011.05.008
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/plantmb/