• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

ストレス適応における窒素リサイクルの隠れた機能の解明とプリン派生シグナルの検証

公募研究

研究領域大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析
研究課題/領域番号 23119514
研究機関広島大学

研究代表者

坂本 敦  広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60270477)

キーワードプリン分解 / ストレス適応 / 窒素リサイクル / 窒素代謝 / 植物 / 核酸塩基 / 異化代謝 / アラントイン
研究概要

本研究は,植物における主たる役割が窒素リサイクル系への資源供給と考えられてきたプリン分解が,如何にして植物のストレス適応に貢献しているのかを分子レベルで解明することを目指している。プリン分解の遺伝的抑制は植物のストレス感受性を亢進することから,多段階の酵素反応から生じる種々の代謝産物の中に,ストレス適応に貢献する化合物が存在すると想定される。本年度は,ストレス条件で蓄積が誘導されるプリン分解物であるアラントインに的を絞り,その恒常的な蓄積がもたらす植物生理や遺伝子発現への影響を解析し,以下の結果を得た。
1.プリン分解の主要な代謝中間体アラントインの蓄積が与える植物生理学的影響
アラントインの分解酵素を欠損し,恒常的にこの代謝中間体を蓄積するシロイヌナズナの遺伝子破壊株は,通常条件では野生株よりも良好に成長したが,乾燥条件では高い気孔開度と蒸散量を示し,その生存率は著しく低下した。その原因を究明した結果,遺伝子破壊株におけるアブシジン酸(ABA)の内生量が,通常条件では野生株よりも高かったのに対し,乾燥条件では逆に低く抑制され,ストレス応答遺伝子が十分に発現していないことが判明した。以上の結果は,アラントインの蓄積が内生ABA量に影響し,ストレス応答を遺伝子発現レベルで変化させることを示しており,プリン分解とABA代謝間の予期せぬ生理学的関連が明らかとなった。
2.アラントインの蓄積が与えるグローバルな遺伝子発現への影響
上記の解析から,アラントインの蓄積が遺伝子発現に大きく影響を与えることが示唆されたため,遺伝子破壊株を対象にマイクロアレイ解析を実施した。その結果,ストレスからの保護や,ABAなどの植物ホルモンの代謝・応答に関わる遺伝子の転写産物レベルが有意に上昇していることが判明し,ストレス関連遺伝子の発現を惹起する生理作用をアラントインが有する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ABAホメオスタシスとの生理学的連関やグローバルな遺伝子発現への影響等,ストレス適応におけるプリン分解の本質的役割の解明に突破口となり得る発見があったため。

今後の研究の推進方策

本年度に得られた研究成果は,植物のストレス応答において極めて重要な役割を担うABAのホメオスタシスとプリン分解の生理学的関連を強く示唆している。次年度は,アラントインの蓄積が内生ABA量に影響を与える分子メカニズムの解明に主として取り組み,この予期せぬ生理学的関連を合理的に説明できる確かな実験根拠を得る。また,シグナル伝達と比較して研究が立ち遅れているABAの代謝制御について新規性の高い知見をもたらすことで,新たな研究の展開に繋げたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Differences in intron-mediated enhancement of gene expression by the first intron of cytosolic superoxide dismutase gene from rice in monocot and dicot plants2012

    • 著者名/発表者名
      Shigeto Morita
    • 雑誌名

      Plant Biotechnology

      巻: 29 ページ: 115-119

    • DOI

      10.5511/plantbiotechnology.11.1207a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structure-function relationship of assimilatory nitrite reductases from the leaf and root of tobacco based on the high resolution structure2012

    • 著者名/発表者名
      Shogo Nakano
    • 雑誌名

      Protein Science

      巻: 21 ページ: 383-395

    • DOI

      10.1002/pro.2025

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Prolonged exposure to atmospheric nitrogen dioxide increases fruit yield of tomato plants2011

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, M., et al
    • 雑誌名

      Plant Biotechnology

      巻: 28 ページ: 485-487

    • DOI

      10.5511/plantbiotechnology.11.0819a

    • 査読あり
  • [学会発表] Purine ring catabolism is involved in plant drought protection2011

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto, A., et al
    • 学会等名
      International Symposium "Strategies of Plants against Global Environmental Change"
    • 発表場所
      Kurashiki, Japan
    • 年月日
      20111208-20111210
  • [学会発表] Can purine metabolites serve as a potential inducer of gene expression?-A transcriptome analysis of Arabidopsis in response to allantoin2011

    • 著者名/発表者名
      Watanabe, S., et al
    • 学会等名
      International Symposium "Strategies of Plants against Global Environmental Change"
    • 発表場所
      Kurashiki, Japan
    • 年月日
      20111208-20111210
  • [備考]

    • URL

      http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/mpb/index.html

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi