研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
23119516
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
丸山 明子 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70342855)
|
キーワード | 遺伝子下流域 / 遺伝子発現制御 / 硫酸イオントランスポーター / 硫黄 / 成長制御 |
研究概要 |
硫酸イオントランスポーターSULTR2;1の遺伝子下流域は、硫黄欠乏に応答した発現上昇を担い、さらに他の遺伝子の発現及び植物の成長を促進する。これまでの結果から、SULTR2;1の-S応答領域(2;1-SURE)が基本転写因子複合体に作用して転写を活性化すると考えている。2;1-SUREへのT-DNA挿入株(tKO)では、-S下でもSULTR2;1の発現上昇が起こらない上、近傍遺伝子の-Sに応じた発現上昇、植物の成長が阻害される。この現象はSULTR2;1コード領域のT-DNA挿入株(KO)では認められず、2;1-SUREの欠損が原因と考えられる。本研究では、2;1-SUREによる遺伝子発現及び成長制御の分子機構を解明するべく、遺伝子発現の巨視的な解析、及び2;1-SURE依存的な発現誘導機構の遺伝学的・分子生物学的な解析を行う。 平成23年度は、(1)2;1-SUREと成長制御との関連を明らかにするため、これまで作製した2;1-SUREを持つ形質転換植物のホモ系統を取得し、+S・-S下における成長を解析した。さらに、これらの植物におけるT-DNA挿入部位を決定し、挿入部位近傍に存在する遺伝子の硫黄栄養条件による発現変動を定量的PCRにより解析した。しかし、成長促進、発現促進はともに認められなかった。T-DNAにより挿入された2;1-SUREでは、近傍遺伝子までの距離が遠いことが原因ではないかと推定している。次いで、(2)WT、KO、tKOについて、+S・-S下におけるマイクロアレイ解析を行った。データ解析は平成24年度も継続して行う予定であるが、tKOでのみ発現の変動するものがSULTR2;1の他にもいくつか見出された。(3)2;1-SURE依存的な発現誘導機構を明らかにするため、2;1-SUREによる-S応答性発現誘導を欠損した変異株の単離を行った。2;1-SURE依存的なGFPの蓄積が起こる35Sminimalプロモーター-GFP-SULTR2;1下流域を持つ形質転換植物(mPG2T)を用いて、-S下でGFPの蓄積が起こらない変異株を探索した。平成23年度はmPG2Tへの戻し交雑と変異株の確立を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載した(1)および(3)の遂行に多くの時間と労力が必要であったため、平成23年度の研究計画に記載した酵母1ハイブリッドスクリーニングによる2;1-SURE結合タンパク質の単離を遂行することができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要(1)において、2;1-SUREによる近傍遺伝子の発現調節が認められなかった。これは、T-DNAにより挿入された2;1-SUREでは、近傍遺伝子までの距離が遠いことが原因ではないかと推定している。そこで、SULTR2;1周辺のゲノム領域のコード領域部分をレポーター遺伝子に置き換えた遺伝子カセットを植物に導入し、2;1-SU昭に変異を導入した場合に周辺遺伝子への影響がなくなることをより直接的に解析しようと考えている。当初の実験計画には記載していないが、予測通りの結果が得られれば(3)で取得している変異株の解析、および平成24年度に行う酵母1ハイブリッドスクリーニングによる2;1-SURE結合タンパク質の単離と解析においても有用な実験材料になると考えている。
|