SULTR2;1は維管束系で発現し、植物体内の硫酸イオンの移行に働く。SULTR2;1の-S応答領域(2;1-SURE)が、3’非翻訳領域よりも下流に存在し、上流域を選ばずに-S下でのレポーター遺伝子の発現を高める事から、2;1-SUREが転写を活性化すると考えられる。2;1-SUREへのT-DNA挿入株(tKO)では、-S下でもSULTR2;1の発現上昇が起こらない上、近傍遺伝子の-Sに応じた発現上昇、植物の成長が著しく阻害される。いずれの現象もSULTR2;1コード領域T-DNA挿入株(KO)では認められず、2;1-SUREの欠損が原因と考えられる。本研究では、2;1-SURE依存的な発現誘導機構・成長調節機構に関する遺伝学的・分子生物学的な解析を試みた。 2;1-SUREを持つ形質転換植物の硫黄十分(+S)・-S下における成長を解析した。12系統の内、1系統では成長促進が認められたが、T-DNA挿入部位近傍遺伝子の発現との相関は認められなかった。2;1-SUREが成長促進に働くためには、ゲノム上の位置など他の因子が必要であると考えられた。 野生型株、KO、tKOの+S・-S下におけるマイクロアレイ解析を行い、tKOでのみ顕著に発現の変化する複数の遺伝子を同定した。2;1-SUREを介して発現を誘導する因子を得る目的で、35S minimalプロモーター-GFP-SULTR2;1下流域を持つ形質転換植物を用いて-S下でGFPの蓄積が起こらない変異株を探索した。得られた変異株のF3系統では、-SによるSULTR2;1の発現誘導が失われていた。また、マイクロアレイ解析から見出された”tKOで-Sによる発現誘導が失われる遺伝子”についても同様であった。これらの結果から、今回得られた変異株の原因遺伝子が、2;1-SUREによる発現誘導に重要な役割を持つと考えられた。
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