公募研究
350種のシロイヌナズナaccessionsを用いた耐塩性評価により、耐塩性に優れるaccessionsは、生育に影響を与えない程度の塩ストレスを一定期間経ることで、海水程度の塩水(浸透圧)にも耐性を示す、「塩馴化能」が優れていること、さらにこの塩馴化能が1遺伝子座により制御されていることを明らかにしてきた。本年度は、この遺伝子座の同定を目的として、genome-wide association study(GWAS)を行った。具体的には、206 accessionsの塩馴化能を評価し、250,000SNPsデータを用いたGWAS解析を行った(USDA.ARS 米国農務省植物栄養部門 Owen Hoekenga主任研究員との共同研究)。その結果、塩馴化に寄与する可能性のある複数SNPsを特定した。さらに、塩馴化能を有するZu-Oにイオンビームを照射して突然変異を誘導した種子を作成し、40000粒のM2種子(2000粒のM1種子由来)を用いてスクリーニングを行った。その過程で、1つの塩高感受性を単離した。遺伝学的解析の結果、原因遺伝子が耐塩性必須遺伝子、SOS1(Na^+/H^+ antiporter)であることを明らかにした。この変異株の耐塩性は極めて損なわれているものの、塩馴化試験(弱い塩ストレスに一定期間曝した後、高浸透圧ストレスを施す試験)においては、塩馴化能欠損accessionであるCol-0を超えた高い耐性を示すことから、塩馴化能の重要性を遺伝学的に示すことが出来た。
2: おおむね順調に進展している
これまでに遺伝学的な解析により、塩馴化能を制御する遺伝子座の領域を絞り込んできた。本年度行ったGWASは、この領域から、原因となりうるアミノ酸置換を誘導する候補SNPsを絞り込むための解析であり、非常に明確な結果を得ることが出来た。
耐塩性シロイヌナズナが有する塩馴化能の解析については、得られた候補SNPsを有する遺伝子群を、塩馴化能が欠失したaccessionsに導入することで、原因遺伝子の特定が期待される。しかしながらGWASで用いた250,000SNPsは、実験系統であるCol-0とLerのSNPsを中心に作られたものであり、Col-0と塩馴化能を有する耐塩性accessions間にはさらに多くのSNPsの存在が考えられる。今後は早急に塩馴化能を有する耐塩性accession由来のBACクローンを作成し、もれなく塩馴化能を説明するSNPsを特定する必要がある。
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J Wood Sci
巻: (In press)(未定)