公募研究
種子発芽時にアブシジン酸(ABA)シグナルの負の制御因子として主要な役割を担う2C型タンパク質脱リン酸化酵素(PP2C)のクラスターAに属するAHG1に注目し、AHG1の相互作用因子の同定を試みた。まず、シロイヌナズナの野生型Col-0にYFPを融合させたYFP-AHG1を発現させた過剰発現体を作成、ホモラインを選抜し、以下の解析に用いた。クラスターAに属する別のPP2Cの一つであるABI1の解析より、YFP-ABI1タンパク質は細胞質と核に局在することを報告していたが、YFP-AHG1タンパク質は核に強く局在していた。また、YFP-AHG1過剰発現体はYFP-ABI1過剰発現体が示す植物体の矮性化は見られなかった。一方、YFP-AHG1過剰発現体は、YFP-ABI1過剰発現体と同じようにABAによる種子発芽の抑制が見られず、RD29BなどのABA誘導性遺伝子の発現誘導においても非常に強いABA非感受性を示すことを明らかとした。タバコを用いた共免疫沈降実験より、AHG1はPYR1とABA依存的な相互作用が見られないことを見出した。以上より、AHG1はABI1と共通する部分はあるが、明らかに異なる制御を受け、標的となるタンパク質も異なる可能性が示唆された。YFP-AHG1過剰発現体より、YFP-AHG1融合タンパク質に相互作用する因子をGFPアフィニティーカラムで精製し、現在、共同研究先で質量分析計を用い、YFP-AHG1の候補相互作用因子の同定を試みている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は東日本大震災の影響により実験が2ヶ月ほど行えない状況にも関わらず、1)YFP-AHG1過剰発現体のホモラインの選抜、2)GFP抗体の作製、3)GFPアフィニティーカラムを用い、YFP-AHG1の候補相互作用因子の精製を行い、本年度の目標を達成したため。
今年度はAHG1相互用因子を同定し、機能解析を行う。また、ABI1とAHG1の相互用因子の違いを比較し、基質の共通性や特異性を明らかとし、複雑なABAシグナルネットワークの実態解明に迫る。
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Current Biology
巻: 21 ページ: 990-997
10.1016/j.cub.2011.04.045