研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
23119522
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
関 原明 独立行政法人理化学研究所, 植物ゲノム発現研究チーム, チームリーダー (80281624)
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キーワード | 乾燥ストレス / ヒストン修飾酵素 / シロイヌナズナ / マイクロアレイ / 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
乾燥などの環境ストレスに対する植物の応答や耐性機構に関する研究は近年、飛躍的に進んでいる。しかしながら、植物におけるエピゲノム変動を介した環境ストレス応答とその制御機構はほとんど解析されていない。我々はこれまでに、シロイヌナズナが乾燥ストレスを受けて誘導する遺伝子の発現状況(量)が、ヒストン修飾の量・質的な変化と相関していることを明らかにしてきた。この事から、ヒストン修飾を中心としたエピゲノム制御機構が、植物の環境ストレス応答に関与することが十分に考えられる。本研究では、シロイヌナズナのヒストン修飾酵素遺伝子変異体を用いた解析を行い、環境ストレス、特に乾燥ストレス応答に関わるエピゲノム制御機構の解明を目指す。 シロイヌナズナのヒストン修飾酵素遺伝子変異体を用いて乾燥ストレス試験を行った結果、ヒストン脱アセチル化酵素HDA6遺伝子の変異体が、乾燥ストレス耐性を示す事を見出した。野生株とhda6変異体を比較したところ、乾燥ストレス応答時の植物体の水分量および気孔の開閉などに差異は見られなかった。乾燥ストレス応答に関与する既知の代表的な遺伝子群について乾燥ストレス時の遺伝子発現応答を調べたところ、hda6変異体と野生株との間に差異は見られなかった。乾燥ストレス処理時の遺伝子発現プロファイルをマイクロアレイを用いて解析した結果、新規なストレス応答性代謝経路の遺伝子発現が野生株とhda6変異系統の間で異なっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナのヒストン修飾酵素遺伝子変異体を用いて乾燥ストレス試験を行った結果、ヒストン脱アセチル化酵素HDA6遺伝子の変異体が、強い乾燥ストレス耐性を示す事を見出している。マイクロアレイ解析を行ったところ、興味深いことに新規な代謝パスウェイの発現応答が野生株と変異体の間で異なっている事を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒストン脱アセチル化酵素HDA6が上記新規代謝パスウェイの遺伝子領域に直接結合しているかどうかをクロマチン免疫沈降法を用いて解析する。また、hda6変異体と野生株の間で乾燥処理条件下で新規代謝パスウェイの代謝産物の蓄積量に差がないかどうか解析する。上記の研究を通してなぜhda6変異体が乾燥ストレス耐性を示すかを明らかにする。
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