研究領域 | 大地環境変動に対する植物の生存・成長突破力の分子的統合解析 |
研究課題/領域番号 |
23119524
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
持田 恵一 独立行政法人理化学研究所, バイオマス研究基盤チーム, 上級研究員 (90387960)
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キーワード | オルガネラ / 数理モデル / Google Map / 広域TEM / データベース / 高圧凍結 |
研究概要 |
本研究では、高倍率・広領域・高精細な電子顕微鏡(TEM)像の超微細形態学と計算機による情報学的な解析を組み合わせることにより、環境ストレスに応答して変化する細胞小器官の分化や形態の変化を広域計測・定量し、数理モデルを構築しながら、植物の細胞から器官レベルでの環境ストレス応答の理解を目的とする。 初年度の研究成果として、以下の成果を得た。1)シロイヌナズナ芽生え根端を用いて、根端全域に渡り超微細構造が保持されるよう高圧凍結技法および超薄切片作製法を改良した。さらに、網羅性とスループットの向上を目指し、数千枚を超えるTEM像の精密な合成、広域画像からのオルガネラ自動認識、自動認識した各種オルガネラ動態の定量化について、イメージング解析プログラムの開発と実装に関する共同研究を開始し、本研究での解析基盤に実装した。2)広域TEM画像をGoogle Map APIにより変換し、データベース化するために必用なアプリケーション開発・実装等を行ったことで、広域TEM像上の細胞小器官にアノテーションを加え細胞や組織ごとに分布定量化するための解析基盤を整えた。3)塩ストレスを与えたシロイヌナズナ根端を用いて、細胞小器官の広域超微細形態解析を行った結果、一部の細胞域で液胞の断片化と変形等が観られるなど、顕微スケールでの塩ストレス応答の基礎的データを得た。 これまでの研究により、植物組織の広域超微形態を解析するための解析基盤を整えることができ、環境ストレス処理を施した植物のオルガネラ動態の解析を進めた。また、植物の顕微スケールでのストレス応答を特徴づける細胞小器官の数や形、大きさなどの変化を計測し、数理モデルでの表現に向けたデータの収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請所に記載した初年度の計画に基づいて、植物組織の広域超微形態を解析するための解析基盤を整えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、広域画像合成やオルガネラ自動認識の解析プログラムを実装することで、網羅的かつ高速なデータの収集を可能とする技術開発を行う。また、各オルガネラの動態に応じたモデルを検討することで、より適合性の高い数理モデルが構築できると期待される。塩ストレス処理を施したシロイヌナズナの根端組織では、各細胞小器官それぞれのレベルでの変化が観察されるとともに、細胞死が観察された。塩ストレス処理時間に応じた根端組織域での細胞死の広がりパターンや、細胞の種類毎にストレスに対する堅牢性などを定量する手法の実装を進め、細胞の種類や組織内の構造に応じた耐性機構を議論するための基礎的な知見を収集する。
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