研究領域 | 学際的研究による顔認知メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23119715
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
飛松 省三 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (40164008)
|
キーワード | 顔認知 / 両眼視野闘争 / モルフィング顔画像 / 後方マスク課題 / 気付き / サブリミナル / 事象関連電位 / α振動 |
研究概要 |
顔がヒトにとって特別な刺激であるために特化した顔中枢ができたのか、それとも日常見慣れているために顔中枢ができたのかは結論が出ていない。ここ2年「顔認知」班で研究を進めてきた「両眼視野闘争とモルフィング技法を用いた顔への気付き」の成果をまとめると共に「顔と身体の多義図形に対する正と負のプライミング効果」および「人物情報による表情認知加速化現象」で顔の特殊性を追求する。これらの実験課題を用いてsubliminal(識閾下)からvisual awareness(視覚的気付き)に関連した顔認知の脳内基盤を明らかにする。解析には高密度脳波計(128ch EEG)と全頭型MEG(306ch MEG)を用い、時空間的な顔認知機構を研究した。1)両眼視野闘争:「ヒトの顔と家」、「ヒトの顔とサル」、「サルの顔と家」を呈示し、「ヒトの顔」、「サルの顔」、「家」の「見え」に気付いた時の反応特性の違いを誘発α振動で検討した。心理実験では「ヒトの顔」>「サルの顔」=「家」という「ヒトの顔」の特殊性が示された。誘発α振動の観察では、「ヒトの顔」に気付いた時に事象関連脱同期を認めた。現在、脳磁図計測により詳細な解析を行っている。2)モルフィング顔画像:「サル→ヒトの顔」へのモルフィング画像観察中に「ヒトの顔」の「見え」に気付いた時の脳波γ振動あるいは顔が見えた時点でのERP(N170)を用いて脳内プローブを検討した。N170振幅は、「ヒトの顔」>「モルフィング画像」>「サル」であり、顔の倒立効果は「サル」で認めなかった。以上より、「ヒトの顔」の特殊性が窺えた。3)マスク刺激による先行視覚刺激(識閾下、閾上)の効果:識閾下では、N170は出現しないが、後頭部のN150成分が顔く物体であり、倒立顔ではその効果が消失した。意識に上らなくても、顔認知をしている可能性が示唆され、論文にまとめて報告した。4)物情報による表情認知加速化現象では、N170成分の変化を認めたので、論文作成準備に取りかかっている。以上より、「ヒトの顔」の特殊性が示されたので、domain specificかどうか更に検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験課題のうち、マスク刺激による先行視覚刺激(識閾下、閾上)の効果はすでに、論文として発表した。人物情報による表情認知加速化現象は、データ収集が終わり、解析中である。近々、論文にまとめて投稿する予定である。両眼視野闘争時の「ヒトの顔」の特殊性も多チャンネル脳波計測のデータをもとに、脳磁図計測を開始、誘発振動がヒトの顔の気づきに関連しているデータが得られた。モルフィング画像による「ヒトの顔の特殊性」は種の同定に関わる後期陽性成分を見出し、学会発表した。以上、概ね順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
・順調に研究が進展しているので、研究計画に変更はない。 ・学会発表(国内、国際)を行い、成果を論文にまとめる予定である。
|