顔がヒトにとって特別な刺激であるために特化した顔中枢ができたのか、それとも日常見慣れているために顔中枢ができたのかは結論が出ていない。H21-22年度の「顔認知」班で研究を進めてきた「両眼視野闘争とモルフィング技法を用いた顔への気付き」の成果をまとめると共に「顔と身体の多義図形に対する正と負のプライミング効果」および「人物情報による表情認知加速化現象」で顔の特殊性をさらに追求した。これらの実験課題を用いて識閾下から視覚的気付きに関連した顔認知の脳内基盤を検討した。解析には高密度脳波計(128ch EEG)と全頭型MEG(306ch MEG)を用い、時空間的な顔認知機構を研究した。1) 両眼視野闘争: 「ヒトの顔と家」、「ヒトの顔とサル」、「サルの顔と家」を呈示し、「ヒトの顔」、「サルの顔」、「家」の「見え」に気付いた時の反応特性の違いを誘発α振動で検討した。心理実験では「ヒトの顔」>「サルの顔」=「家」という「ヒトの顔」の特殊性が示された。誘発α振動の観察では、「ヒトの顔」に気付いた時に事象関連脱同期を認めた。現在、脳磁図計測により詳細な解析を行っている。2) モルフィング顔画像:「サル→ヒトの顔」へのモルフィング画像観察中に「ヒトの顔」の「見え」に気付いた時の脳波γ振動あるいは顔が見えた時点でのERP(N170)を用いて脳内プローブを検討した。N170振幅は、「ヒトの顔」>「モルフィング画像」>「サル」であり、顔の倒立効果は「サル」で認めなかった。以上より、「ヒトの顔」の特殊性が窺えた。3) マスク刺激による先行視覚刺激(識閾下、閾上)の効果: 識閾下では、N170は出現しないが、後頭部のN150成分が顔<物体であり、倒立顔ではその効果が消失した。4) 人物情報による表情認知加速化現象では、N170成分の変化を認めた。
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