研究概要 |
人間の顔表情はコミュニケーションにおける意思疎通,特に感情の伝達において重要な役割を担っている.人間の顔表情から感情の程度を定量化するためには,表情の表出に伴う顔の変化(物理的変化量)と認知される感情(心理的変化量)の対応関係を明らかにすることが重要である.本研究では自己組織化マップ(SOM)と対向伝播ネットワーク(CPN)を応用することにより,個人固有の表情パターンの「物理的変化量」と認知される感情の「心理的変化量」を定量的に対応付ける表情特徴空間の生成手法を確立すること,また,表情特徴空間の生成及び評価を実施するための表情解析ツールを開発することを目的としている. 平成23年度は表情特徴空間の生成手法に関する検討を実施した.具体的には,Russellの心理空間モデル(円環モデル)に着目し,表情パターンの変化の程度と感情の程度を対応付ける表情特徴空間の生成手法を提案した.提案手法を用いることにより,表情パターンの変化の程度(物理的変化量)に対し,被験者ごとに共通の指標に基づいた感情の程度(心理的変化量)を対応付けることが可能となった. また,汎化能力の向上を目的とした表情カテゴリのデータ拡張手法に関する検討を実施した.具体的には,表情特徴空間の写像空間の構築法(サイズ等)がデータ拡張に及ぼす影響について検証した.その結果,中間表情や混在表情といった各感情カテゴリ間を補間する表情パターンの生成が可能であることが明らかとなった.以上の結果は自然な表情を対象とした感情の程度の定量化を実現する上で有用と考える.
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