研究領域 | 学際的研究による顔認知メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23119719
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 珠実 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (90589201)
|
キーワード | 瞬目 / 自閉症 / 同期 / 顔認知 / 言語発達障害 |
研究概要 |
対面会話時の話者と聴者の瞬目が、話の切れ目で特異的に同期していることを我々のグループは発見した(Nakano & Kitazawa,2010)。そこで、顔の目と口の情報がどのような相互作用を通じて瞬目の同期を引き起こしているのか、を明らかにするために、映像に特殊な加工を施し、顔の一部分のみ見える課題を作り、顔のどの部分が見えている時に、瞬目の同期がおきるのかを調べたところ、目のみ、口のみの条件では瞬目同期が生じず、顔全体が見えている時にだけ瞬目同期が生じていたことから、目・口両方を含む顔全体の情報が、2者間の瞬目の同期現象には欠かせないことが示された。 さらに、対面会話時の話者と聴者の瞬目同期とコミュニケーションの関係性を明らかにするために、コミュニケーションの質的な障害が主症状である自閉症において、このような他者との瞬目の同期が生じるのを調べたところ、定型発達群では瞬目の引き込み現象が認められたのに対し、自閉症群は、目と口を定型発達群と同じような注視率で見ていたにも関わらず、自閉症群では瞬目の同期現象が生じていなかった。このことから、自閉症群のコミュニケーションの質的障害は、他者と文脈や情報を共有し、他者に同調しよういう無意識な行動が生じないために引き起こされているのかもしれない。これらの結果をまとめた論文はNeuropsychologia誌に掲載された。 また、言語のみに特異的に発達遅延が生じる子供と自閉症の子供で、社会的な映像の注視パターンに違いがあることを発見した。さらに、この特異的言語発達障害の子供たちは、定型発達の子供と比較して、口を注視する時間が有意にながいことも発見した。この成果はPediatric誌に論文が掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度にて、主な研究計画に基づく主要な実験を遂行し、結果もまとめて論文が英文専門誌に掲載された。さらに、自閉症と、特異的言語発達障害の子供を比較した研究も行い、論文が英文専門誌に掲載されたことから、当初の計画以上のスピードで進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度で主な実験を実施したため、次年度はさらに、その神経メカニズムにまで迫るため、MRI装置などを用いて、瞬目同期現象に関わる脳活動を計測する実験なども遂行する。
|