研究領域 | 学際的研究による顔認知メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23119722
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鶴原 亜紀 中央大学, 研究開発機構, 機構助教 (40342688)
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キーワード | 顔知覚 / 空間知覚 / 乳児 |
研究概要 |
本研究の目的は、三次元空間における「顔」知覚の発達について、乳児を対象とした行動実験により検討することである。 H23年度には、「顔」を「立体」として知覚する能力および「顔」を用いて「空間」を知覚する能力の発達について、以下の2つの行動実験により検討した。まず、実験1では、実際にはお面の裏のようにへこんでいても出っ張って見えるという錯視(Hollow Face錯視)が、乳児にも見えているかを検討した。実験の結果から、立体形状を知覚できる生後7-8ヶ月児でも、成人と同様にはHollow Face錯視を知覚せず、へこんだ顔はへこんで見えることが明らかになった。このことは一般的な立体形状の知覚の発達に比して、「顔は出っ張っているものだ」という顔の立体形状についての仮定の発達が緩やかであることを示唆している。本研究の結果は、英語の学術論文としてi-Perception誌に掲載された。 さらに実験2においては「顔」を用いて「空間」を知覚する能力の発達について、生後4-5ヶ月児でも、成人と同様に、大きな顔の方が小さな顔よりも近くにあるように見えることを明らかにした。本研究の結果は、国際学会であるThe 34th European Conference on Visual Perceptionで発表し、英語の学術論文として投稿中である。 顔知覚は、空間情報の処理とは異なる、脳内の特定部位において処理されることが多くの研究により示されている(Kanwisher et al.,1997)。「顔」知覚においては主に腹側経路が活動し、立体および空間知覚においては主に背側経路が活動するというものである。本研究は、「顔」という社会的コミュニケーションをとる手段としての意義が大きい視覚刺激の三次元情報の処理の発達を明らかにできるとともに、腹側経路と背側経路の情報の統合の発達の解明にもつながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、三次元空間における「顔」知覚の発達について、乳児を対象とした行動実験により検討することを目的としている。H23年度は「顔」を「立体」として知覚する能力について、国内外の共同研究者と共に一般的な立体形状の知覚の発達に比して、「顔は出っ張っているものだ」という顔の立体形状についての仮定の発達が緩やかであることを示し、英語の学術論文として発表した。さらに、「顔」を用いて「空間」を知覚する能力の発達についての英語の学術論文を1本投稿中である。本研究はおおむね問題なく進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
大きな変更として、H24年度は研究代表者の所属変更により、乳児を対象とした行動実験を国内外の研究協力者の研究室で実施する必要が生じている。このため、研究代表者が研究協力者の研究室に出張し、直接議論を重ね、実験準備および実験実施者へのインストラクションを行なうことを予定している。さらに、H24年度からの研究代表者の所属機関では、脳磁図(MEG)を用いた実験も可能であることから、本研究課題を発展させるものとして、「顔」の空間情報処理における成人の脳活動の測定も視野に入れ、研究協力者およびH24年度からの研究代表者の所属機関との調整を行なう。
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