研究領域 | 学際的研究による顔認知メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23119728
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
三木 研作 生理学研究所, 統合生理研究系, 助教 (10442534)
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キーワード | 認知科学 / 神経科学 / 脳・神経 / 脳磁図 / 顔認知 |
研究概要 |
以前の研究において、表情変化に伴う誘発脳波の発達による変化を検討した(Clinical Neurophysiology(2011))。用いた条件は以下の条件であった。I.N-H条件:無表情の顔から急に笑った顔へ変化する。II.H-N条件:N-H条件の逆。III.N-A条件:無表情の顔から急に怒った顔へ変化する。IV.A-N条件:N-A条件の逆。健常成人では、表情変化に誘発される陰性波は、どの条件においても14歳までに比べ、有意に活動潜時(表情変化から陰性波の振幅が最大になる時間)は短く、またその最大振幅は小さかった。また、成人では14歳までとは異なり、N-H条件が他の条件に比べ有意に大きくなっていた。このことから、健常成人において、笑った顔への表情変化に対して、他の表情変化とは異なる認知過程が存在する可能性が示唆されたが、どの顔から笑った顔へ変化する場合が、この認知過程への影響が大きいかということが疑問点として生じた。 平成23年度には、表情変化における先行刺激からの変化の度合いの違いによる脳活動に関する検討をするために、脳磁場記録を行った。まずは誘発脳磁場を計測するために2枚連続画像を提示した以下の条件を用いた。(1)N-H条件:無表情の顔から笑った顔へ変化する。(2)A-H条件:怒った顔から笑った顔へ変化する((1)に比べ、被験者が心理的に受ける表情変化の度合いが大きいと考えられる)。(3)N-A条件:無表情の顔から怒った顔へ変化する。(4)H-A条件:笑った顔から怒った顔へ変化する((3)に比べ、被験者が心理的に受ける変化の度合いが大きいと考えられる)。今後の予定としては、各被験者ごとに、(1)と(2)(最終的に笑った顔へ変化する2条件)、(3)と(4)(最終的に怒った顔へ変化する2条件)の条件を比較検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の実験計画で挙げていたI. 表情変化における先行刺激からの変化の度合いの違いによる脳活動に関する脳磁場記録を昨年度行った。本年度はその記録の解析と24年度実施予定の実験II. 表情変化認知過程における顔の各パーツの役割に関する実験も同時並行的に行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、実験I.表情変化における先行刺激からの変化の度合いの違いによる脳活動に関する脳磁場記録は昨年度行った。単一双極子モデルによる解析に加え、複数双極子モデルによる解析や周波数解析なども本年度は行っていく。昨年度計測したデータの解析が終了後、早急に下記の実験IIに着手する予定である。 II. 表情変化認知過程における顔の各パーツの役割 顔の各パーツ(特に目や口)の変化がどの程度笑いや怒りなどの表情変化の認知に影響を及ぼしているかを検討する。脳磁図を用いて録・計測を行う。これらAからFの条件と同様に、他の表情(驚きや悲しみ)などの顔を用いて実験を行っていき、それぞれの表情変化の際に、どれだけ目や口の影響があるかどうかを検討する。
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