研究領域 | 学際的研究による顔認知メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
23119730
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
一戸 紀孝 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・微細構造研究部, 部長 (00250598)
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キーワード | マーモセット / 他者の顔認知 / 視聴覚integration / 生体内イメージング / 上側頭溝 / 社会脳 / カラム / 線維連絡による変調 |
研究概要 |
他者の意思や感情を理解するとき、私たちは顔の表情から得られる視覚情報とともに、声から得られる聴覚情報を利用する。これらの情報を正しく処理し適切にふるまうことは、ヒトだけでなく、集団で生活し社会を形成する動物にとって、とても重要なことである。しかし、顔の表情や声から得られる視聴覚情報が、大脳皮質のどのような神経回路で、どのようなメカニズムによって処理・統合されているのかということに関して、まだ多くのことが謎に包まれている。そこで我々は、顔と声から得られる視聴覚情報の処理・統合に関わる大脳皮質神経回路の同定とその情報処理過程を明らかにするため、大脳皮質の神経結合をin vivoで可視化できる新しい技術(生体内神経結合イメージング法)と電気生理学的実験を小型霊長類のマーモセットに適用し、視聴覚情報処理に関わる神経回路の解剖学的・機能的特徴を調べた。まず、大脳皮質上側頭溝(STS)周囲で、マーモセットが発声している際の多様なビデオ刺激を用い電気生理学的記録を行った。その結果視聴覚連合野と考えられた領域の一部(径数百μm)に蛍光トレーサーを注入すると、その領域への投射スポット(径数百μm)を聴覚野と視覚野のそれぞれで同定できた。さらに我々は、STS領域のトレーサー注入領域と可視化した聴覚野の投射スポットにリニアアレイ型の多点電極を大脳皮質に垂直に同時に刺入し、マルチユニット活動(MUA)とLFPの記録を行った。視聴覚刺激を呈示すると、STS領域では皮質の中間の深さに位置する電極から、聴覚野では皮質の浅い位置と深い位置から強いMUAが得られた。また、聴覚野でのMUA、LFPは聴覚刺激のリズムに追従する傾向があるのに対し、STS領域での反応は主に一過性であった。これらの結果は領野間の階層構造を示し、聴覚野は感覚(聴覚)刺激の物理的特性を処理し、STS領域はより高次な情報処理、例えば多感覚(視聴覚)情報の統合や刺激の行動上での意味の認識などを行っていることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しいモデル動物であるマーモセットで、顔の動きに反応する細胞が集積している部位を見いだした。これは、まさに重要な第一歩であり、ここが押さえられれば、今後のトレーサーを注入した実験は容易となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の様に、マーモセットで顔の動きに反応する細胞の集積する部位を見いだした。これは麻酔下で行っていたので、覚醒下の自然な環境での電気記録に挑戦したい。
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