研究概要 |
平成23年度は心理物理実験を用いて顔などの社会的情報価の高い刺激を広い範囲でテストした。基本的な現象を発生させる条件を特定し,その事態でメタ認知の測定を行うことを目的とした。具体的には,これまで申請者は予備実験としてFolk,Leber,& Egeth(2002)と類似した実験事態において,非空間属性による注意制御の不全が生じることを確認している。そこで,本年度はa)からc)に基づいて実験要因を操作した。 顔刺激が存在するために本来無視できた妨害刺激が標的同定成績を低下させる要因の特定 色や形状といった非空間的による知覚的構えに依存して妨害刺激が無視できたり,注意捕捉を生じてしまうという基礎的データに基づき,それらの妨害刺激に随伴させる顔などの社会性が関わる刺激の追加効果の有無を検討した。基本課題は画面中央に提示された高速逐次視覚呈示系列の中から標的刺激(赤色の文字)を同定することであった。このとき,以下の3つの実験・調査を行った。 a)注意捕捉のメタ認知: 顔そのものの存在が注意捕捉を起こすと思うかのメタ認知測定。 b)顔そのものの存在: 妨害刺激枠内に顔画像を呈示する。 c)性別・表情で唯一異なる画像: 環境ベースの注意捕捉説に基づけば,他と異なる逸脱値刺激(いわゆる"仲間外れ")は注意捕捉を生じる.一方,課題ベース説はそのような刺激が注意捕捉するのは課題依存という対立する予測が成り立つため,両仮説の対比が可能になる。 実験1でa)について検証したところ,約70%の被験者(N=50)が顔画像そのものの存在は注意捕捉を起こすというメタ認知をしていた。認知科学研究に携わる被験者(N=51)でもほぼ同様の結果であった。b)で実際に注意捕捉実験を行った結果,顔画像そのものは注意捕捉を全く引き起こさなかった。c)の手続きでも,顔は注意捕捉を引き起こさなかった。この結果は,注意選択は社会的文脈では重要とされる顔刺激にも影響を受けず,強い選択性を持つことが分かった。
|