本年度は当該研究の最終的まとめの段階であり、追加データの収集、研究成果のまとめ、成果発表を行った。 1.ウィリアムズ症候群(以下WS)における顔認知:WS患者は定型発達成人に見られるような倒立顔処理が正立顔処理に比べて苦手である(すなわち顔倒立効果を認めない)とする報告と、定型発達者と変わらずに顔倒立効果を認めるとする報告が混在している。我々はその認知機能を詳細に調べたWS患者において、脳磁図および脳波により倒立効果の発現の有無を検討した。それにより、自験例においても顔倒立効果を認める例と認めない例の存在を明らかにし、その違いはWSに特徴的な視空間認知障害のレベルに依存する可能性があることを示唆した。(Nakamura et al. 2013) 2.WS患者における社会性の認知発達:視点取得課題(ある物体を別の視点からみるとどのように見えるかを問う課題。社会性の発達と関連があるとされている。)を心的回転課題(物体を回転させるとどのように見えるかを問う課題。)との比較において検討した。WS患者においては精神年齢を一致させたコントロール群に比して両課題ともに低い成績を示した。また、WS患者において、精神年齢の増加に伴い心的回転課題の成績の改善がみられるのに対し、視点取得課題ではそれを認めなかった。心的回転課題は視空間認知機能と関連すると考えられるが、視点取得課題とは異なる発達過程を示すことが示唆された。Hirai et al. 2013) 3.WSの社会性の認知発達:顔への注意の強さを視線追跡装置を用いて検討した。課題に無関係に画面上に現れる顔画像に対して、他の物体の画像と比べて注視する時間が長いことが客観的に確認された。(in preparation)
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