公募研究
1.タバコ培養細胞を用いて、ショ糖飢餓で誘導されるマクロオートファジー経路とエンドサイトーシス経路、液胞からの膜輸送経路の関係を解析した。オートファゴソームがGFP-Atg8で可視化できるように細工されたタバコ細胞を用いた。細胞膜をFM4-64で標識してエンドサイトーシスが可視化できる条件下で、ショ糖飢餓処理によりマクロオートファジーを誘導すると、観察されるオートファゴソームの中の比較的多数がFM4-64を持っていた。それに対して、液胞膜をFM4-64で標識して液胞膜の動態が可視化できるような条件下で、マクロオートファジーを誘導しても、オートフナゴソームはFM4-64を持たなかった。このことは、オートファゴソームはまずエンドサイトーシス経路と合流し、次に液胞からの膜輸送経路と合流するという少なくとも二段階で進行することを示唆している。2.ヒメツリガネゴケatg5株の様々なストレスに対するクロロフィル分解、細胞死、コロニーの成長などの表現型を調べた。栄養培地上、明条件下で1週間培養した野生株とatg5株の原糸体コロニーはどちらも鮮やかな緑色をしており、見かけ上、区別がつかない。これらのコロニーを暗条件下に移すと、コロニーの緑色が退色し細胞死が誘導されたが、この反応はatg5株の方が野生株よりも早く起こった。窒素飢餓培地上でも細胞死が誘導され、この細胞死もatg5株の方が野生株よりも早く起こった。熱ストレスや乾燥ストレスなどの様々なストレスを与えて両者の応答を比較すると、ほぼ全般に、ストレス環境下ではatg5株の方が野生株よりも早く細胞死を引き起こす(すなわち、atg5株は野生株に比べてストレスに弱い)という結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
1.研究費補助金により研究に必要な物品が購入できた。2.研究組織「植物環境感覚」で出会えた他の研究者との交流により、新しい研究手法を学ぶことができた。以上2点が、おおむね順調に研究を進めることができた理由であると考える。
1.液胞膜とオートファゴソーム膜の両方がGFPやRFPで蛍光標識されたタバコ細胞を作製し、観察回数を増やして、液胞とオートファゴソームの相互作用をさらに調べる。2.ヒメツリガネゴケ原糸体が暗所で実行する細胞死に伴って起こる細胞内変化をメタボローム解析する。ヒメツリガネゴケでATG5遺伝子以外のATG遺伝子を破壊したり、ゼニゴケでオートファジー関連遺伝子破壊株を作製し、現象の首尾一貫性を明らかにする。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)
Plant and Cell Physiology
巻: 52 ページ: 2074-2087
Plant Signaling and Behavior
巻: 6 ページ: 1-4