研究概要 |
「P-ボディーの挙動」:我々はこれまで、環境応答に関与する遺伝子制御機構に興味を持ち、その機構に関わるタンパク質がP-ボディーと呼ばれる細胞質顆粒に局在することを明らかにしてきた。植物におけるP-ボディーの挙動を観察するため、上記のDCP1相補植物体を用いた。発芽3日程度の植物ではP-ボディーは植物体全体に観察されたが、特に茎頂分裂組織や根の分裂組織~伸長組織に多く見られた。これはDCP1が発生に必須の遺伝子であるという過去の我々の報告に一致する。発生の進んだ14日目の植物では植物体全体でP-ボディーの数が減少していたが。分裂組織ではまだ多くのP-ボディー顆粒が存在していた。更に発生の進んだ1ヶ月程度の植物では、分裂組織でかろうじて観察できる程度であった。このように、P-ボディーはストレスを受けない植物体では、初期発生に大事な役割を持っていることが確認できた。 「環境刺激とP-ボディー」:環境応答時のP-ボディーの動態を調べるため、上記のP-ボディー可視化植物、DCP1相補体に様々なストレスをかけ、その動態を観察した。発芽14日後の植物体に高温、低温、塩ストレスを与えたところ、コントロール植物に比べ、P-ボディーの数、大きさが共に有意に増加した。一方、塩ストレスを与えた植物はP-ボディー顆粒数に差はなかったが、大きさのみ増加していた。 「miRNAとP-ボディーの関係」:RNAサイレンシングも環境変化に応答して、遺伝子発現調節をして環境感覚に働くことが知られている。我々はRNAサイレンシングに必要な分子であるmiRNAとP-ボディーの関係を調べるため、P-ボディー構成要素であるdcp1,dcp2,vcs変異体における、miRNAの蓄積を調べた。その結果、dcp1,dcp2,vcs変異体では野生型に比べ、miRNAの数が減少していた。また、それらのmiRNAにより通常は抑制されているmRNA量がこれらの変異体で増加していることが分かった。
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