公募研究
シロイヌナズナのMCA1とそのパラログであるMCA2は機械受容に関与する膜タンパク質である。MCAIとMCA2は既知のイオンチャネルと相同性がないが、これまでの我々の研究から新規のイオンチャネルであると予想される。そこで、両タンパク質が機械受容性Ca^<2+>チャネル活性を確かにもつことを証明するために、名古屋大学の古市卓也博士、辰巳仁史准教授、曽我部正博教授と共同でゼノパス卵母細胞を利用したパッチクランプ法で調べるための実験系を立ち上げた。また、MCA1とMCA2の構造機能相関の研究において、N末端およびC末端から段階的に削除して、どの領域がCa^<2+>取込みに必要かを調べ得た。その結果、どちらのタンパク質もN末端から約44%の領域がCa^<2+>取込みに必要十分であることが分かった。更にこの領域にはN末端近傍に膜貫通領セグメントと予想される領域があり、しかもこのセグメントの中にCa^<2+>の透過性に関与すると予想されるAsp残基が存在することが分かった。In vitro mutagenesis法により、このセグメントを欠失したMCA1とMCA2は活性を完全に失い、このAsp残基がAsnに置換されたMCA1も完全失活し、同じ置換を受けたMCA2は部分失活することを見出した(〔雑誌論文〕の2を参照)。これらのことは、この膜貫通セグメントがCa^<2+>の透過に重要であることを示している。更に、酵母発現系を利用して、MCA1とMCA2の膜トポロジーを決めた。その結果、上記のN末端近傍の膜貫通セグメントを唯一の膜貫通領域として、N末端が細胞の外側、C末端が細胞の内側に位置することを突き止めた。現在、この結論が正しいことを、別の発現系を利用して確かめている。以上の知見は、植物における動物にはない新規の機械受容性Ca^<2+>チャネルの発見と構造機能相関の解明であり、当該分野で大きな成果だと言える。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度の研究により、MCA1とMCA2がより明確に新規の機械受容性Ca^<2+>チャネルであることが示されたばかりでなく、その構造と機能の関係が相当の精度で明らかにされた、
MCA1とMCA2の構造機能相関を更に明らかにするために、インビトロの転写翻訳系で作らせたタンパク質を用いて膜トポロジーを決定するとともに、そのタンパク質について人口膜上でパッチクランプ実験を行い、単独分子での機械受容性とイオン選択性を調べる。さらには、新学術領域研究の班員と共同で、MCA1とMCA2の新規の生理機能を解明する。この研究は平成23年度に良好な成果を得ているので、今後大いに発展すると期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
BMC Plant Biology
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10.1007/s10265-011-0462-6
http://www.u-gakugei.ac.jp/~iida/