公募研究
光屈性は、植物ホルモン・オーキシンの不等分布による細胞の伸長の差が偏差成長によっておきる現象と考えられており、オーキシン調節による植物の成長制御機構のモデルの一つとして研究されている。本研究は光屈性におけるオーキシン調節の分子機構を、シロイヌナズナの分子遺伝学的手法を用いて明らかにすることを目的として行った。本年度、PINオーキシン輸送体の網羅的な遺伝学的解析を行い、PIN1,PIN3、PIN7が光屈性に関与すること、またこれらのPINに依存しない経路が存在することを示唆する結果も得た。これは、これまで考えられてきた光屈性におけるPINの機能を詳細に理解し、また新しい分子メカニズムの存在を示唆したことによる重要な知見と考えられる。また、新たに光屈性に関与する遺伝子を探索するため、完全長cDNA過剰発現株からの光屈性異常突然変異体選抜を進め、約17遺伝子について、今後その機能の検証を進めることにした。H24年度において、新たな遺伝子発見につながる可能性が期待できる。また本年度、RING E3リガーゼWAV3およびそのファミリータンパク質が、根の重力屈性に関与すること、さらにオーキシン分布制御またはオーキシン感受性に関与することを明らかにし、論文報告した。共同実験では、オーキシン生合成経路の解析を行い、これまで大きな謎とされていたその主経路を解明することに重要な貢献をした。
2: おおむね順調に進展している
WAV3とオーキシン生合成経路の研究は、研究計画主課題からははずれているが、植物環境感覚の領域研究に大きな貢献をしたと思われる。またもっとも重要な課題であったPINの光屈性への関与の詳細もほぼ明らかにすることができ、現在論文投稿準備中である。新たな光屈性異常突然変異体選抜も順調に進んでおり、研究計画をおおむね順調に進んでいると考えられる。
PINの胚軸における機能の詳細を論文として発表したのち、根の光屈性の解析を進めることでPINに依存しない光屈性誘導機構の実体解明に望む予定である。また光屈性に関与する新しい遺伝子探索は、今年度で再現性を確認することで、その関与の証明を終えるところまで進める予定である。
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