本研究において、シロイヌナズナフォトトロピンのLOV2ドメイン(Q376-Q500)のC426A変異体(LOV(C/A)と表記)を用いて、LOV(C/A)を発現させた大腸菌体を用いた蛍光タンパク質のスクリーニング法を確立した。蛍光分光光度計の励起光照射によりLOV(C/A)の蛍光強度が減少する(LOVに結合したFMNが細胞内の還元雰囲気下でセミキノン形が生成する)ことから、LOV(C/A)より光還元速度が速く、定常状態でより低い蛍光強度を示すランダム変異体Mut12を選別した。また、同じ条件でiLOVを発現させた大腸菌では蛍光強度の減少はわずかであった。 これらの大腸菌をPBSバッファに懸濁して24時間放置したとき、定常状態での蛍光強度が放置前のものより高くなった。このことは栄養飢餓ストレスを与えたことにより細胞内部がより酸化的になったのではないかと考え、細胞内NADH/NAD+の量を調べたところ、その比は減少していた。また、定常状態の蛍光強度とNADH/NAD+比には相関が見られ、NADH/NAD+比が高いと蛍光強度が小さくなることがわかった。Mut12(やLOV(C/A))は細胞内の酸化還元環境に応答して蛍光強度を変化させていることが強く示唆される結果となった。 [今後の展望] この蛍光タンパク質の実用化に向けて、LOV(C/A)とMut12、iLOVの精製タンパク質を用いて、光照射後の蛍光強度と酸化還元電位の相関を調べているところである。また、異なる酸化還元中点電位をもつ一連の変異体のスクリーニングも進めている。
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