研究領域 | 植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで |
研究課題/領域番号 |
23120517
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久冨 修 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60231544)
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キーワード | 生物物理 / ナノマシン / 光スイッチ / 発現制御 |
研究概要 |
1.部位特異的変異体の作成と光反応の解析 本年度の研究ではAUREO1の約10カ所のアミノ酸に変異を与え、各変異タンパク質の吸収スペクトルを調べた。その結果、(a)吸収や蛍光スペクトルに影響を与える変異体を見いだした。また、(b)光照射後の吸収スペクトルの戻り反応(暗順応)を解析して、反応速度が変化した数種の変異体を得た。さらに、他のLOVタンパク質に存在している塩橋を作成し、その影響を調べた。 2.DNAへの結合性の定量的解析 AUREO1の構造変化を調べることを目的として、動的光散乱法を用いた。光照射前後のAUREO1のLOVドメイン(AC1-LOV)の流体力学的半径には変化が見られなかったが、bZIPとLOVドメインを含むAC1-ZLでは光照射による流体力学的半径の増加が観測された。このことから、光を受容することによるAC1-LOVの構造変化は小さいが、それがbZIPドメインの構造あるいはbZIPとLOVドメインの相対位置を変化させることが示唆された。この変化がAUREO1の機能の駆動力となっていることが推察された。 3.最先端の生物物理学的解析 過渡回折格子法を用いた解析に関しては、既に研究結果を論文の形でまとめることができた。また、赤外分光解析に関しても、データが出始めているので各アミノ酸残基の振動モードやその変化が順次明らかになると期待される。さらに、円偏光二色性(CD)測定に関しても、既に有用なデータが得られており、これらの解析からAUREO1のLOVの光反応にどのような特徴があるかを明らかにできると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画のうちで、DNAとの結合性の定量的評価に関しては当初の目標を達成していないが、これは、光散乱を用いたAUREO1の構造変化の解析を優先したためである。流体力学的半径の解析によって得られた結果は、LOVドメインの普遍性と多様性を理解する上で非常に重要な知見となった。また、共同研究として進めている先端の生物物理学的研究も順調に進んでいるので、計画全体としては「(2)おおむね順調に進展している。」に該当すると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究から、光を受けたAUREO1の構造変化についての知見が得られた。そこで、今後の研究としては、AUREO1とDNAとの結合を詳細に解析することが重要であると考えられる。本研究では、ゲルシフトアッセイに加え、動的光散乱法、蛍光偏光解消法、FRETなどの生物物理学的測定手法を用いて、結合の強さを定量化していく。また、光による転写制御システムについても、実際に条件検討を行っていきたい。 その他の解析に関しても、現在4機関との共同研究が順調に進行しているので、さらに積極的に推進することで、AUREO1がになう生命現象を分子レベルで明らかにしていきたいと考えている。
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