オーレオクローム(AC1)について分子メカニズムを解析し、光情報受容と転写調節に関する以下のような成果を得た。 1.LOVドメインの多様性と普遍性: LOVドメインの約15種のアミノ酸をに変異を与えることで、分光学的性質に影響を与える変異体を探索した。Gln317をLeuに置換することにより、吸収極大波長が短波長シフトすることを明らかにした。さらに、AC1翻訳領域全長(FL)、bZIP-LOV(ZL)およびLOVドメインのみ(LOV)からなる組換えタンパク質を作成して、光反応を調べた。いずれの組換えタンパク質でも、戻り反応の活性化エネルギーが約110kJ/molであることを示した。 2.流体力学的半径の解析: AC1およびその変異体に関して、みかけの流体力学的半径(RHapp)を測定した。その結果、タンパク質の濃度とともにRHappが直線的に増大することが示唆されたため、複数の濃度においてRHappを測定し、濃度ゼロに外挿して真の流体力学的半径を求めた。FLおよびZLについては、光照射によりRHの増大が見られたが、LOVでは光条件による変化は観察されなかった。このことから、光照射によりFLおよびZLの構造が変化するこが示唆された。 3.最先端の生物物理学的解析:ZLおよびLOVについて円二色性(CD)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定を行い、光照射によりLOVドメインではαヘリックスが減少し、bZIP-linker部分ではαヘリックスが増加することを明らかにした。また、赤外分光分析等により、LOVドメインで生じた変化がN末側に伝搬し、AC1のグローバルな構造変化を引き起こすことが明らかになった。
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