植物は光環境に応じて光をより多く獲得できるようその形態を変化させる。この光環境応答はファイトクロームという光受容体からの信号伝達によってなされていることが明らかである。一方、同じ光環境下でも温度が異なるとこの応答性にも変化が生じることが明らかにされ、温度環境感覚と光環境感覚がクロストークしていることが示唆されているが、その分子的実体は明らかではない。我々は、実験植物であるシロイヌナズナが通常の生育温度22℃から6度程度高い温度にさらされると徒長する現象に着目し、この徒長性を失った変異体を順遺伝学的に探索した。T-DNA挿入種子ライブラリーから複数の変異体を単離し、そのうち一つがPIF4の新規アリールであることを見出した。 PIF4は前述の光環境制御において、ファイトクロームと相互作用する因子として周知の因子である。転写レベルとタンパク質レベルの両方で制御されることが知られているが、温度環境下での挙動は調べられていない。そこで、各種分子生物学的解析を行い、「mRNAが高温条件下で誘導されること」と「タンパク質が低温で不安定化すること」を見出した。ファイトクロームによるPIF4タンパク質分解の過程では、PIF4のN末端側の領域がその相互作用に不可欠であるが、低温による分解にはこの領域が必須ではないことを見出し、光情報と温度情報がPIF4において統合されることと区別されることを明らかにしてきた。 より詳細な低温を感知しPIF4分解にいざなう分子機構に迫るため、PIF4を過剰発現する形質転換植物を背景に化学薬品による遺伝子変異導入を行った。約10000種子の後代を得、これらの中で、PIF4タンパク質安定性に影響を示す新規変異体を単離している。本年度の解析により、少なくとも20ラインの変異体を得ることができた。
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