研究領域 | 植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで |
研究課題/領域番号 |
23120520
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
多田 安臣 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (40552740)
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キーワード | 病害抵抗性 / 活性酸素 / 一酸化窒素 / 転写因子 / タンパク質翻訳後修飾 |
研究概要 |
植物は、あらゆる環境刺激に応じて細胞内酸化還元状態(レドックス)を変移させ、適切な生理・生化学的反応を誘導する。レドックスシグナルに関与する一酸化窒素(NO)や活性酸素種(ROS)の生理機能に関する知見が増える一方で、植物のレドックス認識機構と、それに続く遺伝子発現制御機構は殆ど明らかになっていない。そこで、植物病害抵抗性シグナルに重要な役割を担う、NO及びROS応答性転写因子の同定と特徴付けを目的として、病原菌、サリチル酸及びジャスモン酸誘導性の全転写因子タンパク質を用いてスクリーニングを行う。特に、レドックスシグナルを介在するS-ニトロソ化やS-グルタチオン化に対する感受性を検討し、同タンパク質翻訳後修飾のシスエレメント結合能や転写補助因子に対する親和性に与える影響を調査し、疾病防御応答におけるレドックスセンサータンパク質の役割を明らかにする。 一酸化窒素(NO)は病害応答を誘導するので、植物内性のNO供与体であるGSNOを用い、S-ニトロソ化を指標としてNO感受性転写因子をスクリーニングした。転写因子タンパク質は、当研究室で確立した無細胞タンパク質合成系を用い合成した。その結果、TGA、HSF、NAC、WB、ERF、C2H2及びTIFY等の一部転写因子がNO感受性であった。特に興味深い結果として、供試した61のWRKY転写因子は全てS-ニトロソ化感受性であることが明らかになった。アラインメント解析より、WRKYドメイン内システイン残基が全てのWRKYタンパク質で保存されており、NO感知に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的にあるように、NOによる転写因子のスクリーニングと標的転写因子の同定を行った。また、被修飾システイン残基の同定及び同システインミュータントの作成を開始しており、予定通り進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特にWRKY転写因子に対するS-ニトロソ化の影響を調査する。WRKYドメインが被修飾部位であると考えられるので、DNA結合能に影響を受けている可能性が高い。そこで、WRKY18、WRKY40やWRKY70等の病害関連転写因子について被修飾システイン残基を同定し、S-ニトロソ化のシスエレメント結合能やin vivoにおける標的遺伝子発現誘導能に与える影響について検討する。また、グルタチオン化感受性転写因子のスクリーニングも開始しているので、これを終了させる。
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