研究領域 | 植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで |
研究課題/領域番号 |
23120521
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武宮 淳史 九州大学, 大学院理学研究院, 助教 (80448406)
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キーワード | 青色光 / 気孔 / フォトトロピン / H+-ATPas / 赤外線サーモグラフィ / PP1 |
研究概要 |
赤外線サーモグラフィによる葉面温度変化を指標とし、青色光による気孔開口に異常のあるシロイヌナズナ変異体の探索を行った。植物体にあらかじめ強い赤色光を照射し光合成による気孔開口を十分に行わせた後、微弱な青色光を照射すると、野生株では青色光に応答して気孔が開口し葉面温度が低下するが、phot1 phot2二重変異体ではこの変化は全く見られない。現在、本システムを用いて1次スクリーニングを行っており、これまでに約60,000個体のEMS処理株と80,000個体のT-DNA挿入株の測定が終了している。葉面温度変化に異常が見られた個体に関しては、2次スクリーニングとして次世代の植物における再現性の確認、3次スクリーニングとして表皮および生葉における気孔開度測定、4次スクリーニングとして細胞膜H^+-ATPaseの活性化状態の測定を行い、変異体の絞り込みを継続している。これらの中から、特にblue light signaling1(blus1)と名付けた変異体について興味深い結果を得ている。blus1は青色光による気孔開口、H^+放出反応、細胞膜H^+-ATPaseのリン酸化が全く見られないが、H^+-ATPaseの活性化剤であるfusicoccinに応答した反応は正常に見られた。また、blus1ではフォトトロピンや細胞膜H^+-ATPaseそのものは正常に発現し機能していることを確認しており、blus1の原因遺伝子は青色光情報伝達に必須の因子をコードしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
赤外線サーモグラフィによる青色光特異的な気孔開口に異常を示すシロイヌナズナ変異体めスクリーニング手法を開発した。本手法を用いてシロイヌナズナのT-DNAおよびEMSラインを対象にスクリーニングを行ったところ、blus1と名付けた興味深い変異体を入手することに成功した。本変異体の発見は光に対する植物の環境感覚の分子機構の解明に大きな進展をもたらすものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はEMS処理株を100,000個体、T-DNA挿入株を100,000個体、phot1-EMS、phot2-EMS処理株それぞれ30,000個体を目標として、1次スクリーニングを継続する。得られた変異体について詳細な解析を行い、フォトトロピンと細胞膜H^+-ATPase間の情報伝達に異常のある変異体を絞り込む。先行的に解析を行っているblus1変異体について、原因遺伝子を同定し、当該因子が青色光の情報を伝達する分子機構について、さらなる詳細な機能解析を行う。
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