1. 昨年度に引き続き、赤外線サーモグラフィを用いて青色光による気孔開口に異常のあるシロイヌナズナ変異体の探索を行い、これまでに1次スクリーニングとして約10万個体のEMS処理株と10万個体のT-DNA挿入株の測定が終了し、目標としていた20万個体の測定が完了した。葉面温度変化に異常が見られた個体に関しては、2次スクリーニングとして次世代の植物における再現性の確認、3次スクリーニングとして表皮および生葉における気孔開度測定、4次スクリーニングとして細胞膜H+-ATPaseの活性化の測定を行い、変異体の絞り込みを行った。 2. blue light signaling1(blus1)は昨年度、上記スクリーニングにより単離された変異体であり、フォトトロピンとH+-ATPase間の情報伝達を完全に欠いている。本年度はマッピングにより原因遺伝子の同定を進めたところ、BLUS1は孔辺細胞特異的に発現する新奇のプロテインキナーゼをコードしていることが分かった。次にBLUS1がフォトトロピンからの情報を下流へと伝達する分子機構について研究を進め、BLUS1のC末端のSer残基が青色光に依存して特異的にリン酸化されることを見出した。そこで同定されたSerをAlaに置換したBLUS1をblus1変異体に導入し、リン酸化の役割について調べた。その結果、野生型BLUS1を導入した形質転換体では気孔開口は回復するが、変異型BLUS1では回復せず、BLUS1の青色光によるリン酸化は気孔開口に必須のメカニズムであることが示唆された。
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