研究領域 | 植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで |
研究課題/領域番号 |
23120526
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
永田 典子 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40311352)
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キーワード | 葉緑体 / 網羅的解析 / 電子顕微鏡 / シロイヌナズナ / アルビノ |
研究概要 |
ポストゲノム時代において、様々な網羅的情報の解析(オミックス研究)が進められてきた。本研究は透過型電子顕微鏡を用いて葉緑体形態を網羅的に構造観察することを提案するものである。本研究では、2つの目的を掲げた。1つ目は、葉緑体突然変異体の葉緑体構造を電子顕微鏡レベルで網羅的に解析することで、葉緑体構造を構築する遺伝子の法則性を見出し、機能未知の遺伝子機能を予測するモデルを提示することである。2つ目は、細胞や組織全体に渡る広範囲高解像度の電子顕微鏡画像を取得する方法を開発し、葉緑体の構造変化等を統計学的及び総括的に処理できるようにすることである。 (1)葉緑体突然変異体の網羅的な電子顕微鏡観察 アルビノ、ペールグリーン等の葉色に変化の表れたシロイヌナズナ突然変異体について、現在までに約50ラインの葉緑体の観察を行った。似た葉緑体の形態・構造を示したものをグルニピングした。また、中には特徴的な形態異常を示す幾つかの変異体が見出されことから、今後の遺伝子機能の解明に役立つ情報となると思われる。現在、各変異体の欠損遺伝子の情報と葉緑体形態を比較し、何らかの法則性があるかを検証している。 (2)広範囲高解像度の電子顕微鏡画像の取得 これまで手動で行っていた画像取得及び画像結合に関して、半自動化することに成功した。外部PCから電子顕微鏡をプログラム制御し、電子ビーム方向と試料位置の制御を組み合わせることで、半自動で数千枚の画像を取得した。さらに、画像の自動認識・結合プログラムにより、むらのない結合画像を取得することも可能となった。茎頂や胚などにおける広範囲高解像度の電子顕微鏡画像を取得し、色素体の構造変化を統計学的に処理できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉緑体突然変異体の観察は順調に進んでいる。また新しいタイプの突然変異体も見つかっており、スクリーニングとしての目的も無事に達成された。また、広範囲の電子顕微鏡画像の取得については、当初計画としていたよりもデジタル解析技術の開発の面で予想以上に大きく進展した。一方で、光条件を変えた場合の葉緑体観察についてはやや遅れを生じている。このように、進展した部分と多少遅れた部分を相殺し重、区分は(2)であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画よりも広範囲の電子顕微鏡画像取得技術の開発が大きく進展した。突然変異体の葉緑体を形態ごとにグルーピングするという試みは、当初は目視のみで行う予定であったが、このデジタル解析技術を応用することにより機械的に形態を認識できる可能性が生まれた。このような、電子顕微鏡画像を統計学的に処理するための技術開発は、特に推進してくべきであると考えている。今は独立して行っている、(1)葉緑体突然変異体の網羅的な電子顕微鏡観察、と(2)広範囲高解像度の電子顕微鏡画像の取得の研究、を今後は徐々に融合させていきたい。
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