公募研究
黄砂中の環境化学物質が、気管支喘息や花粉症などのアレルギー疾患の発症や悪化の原因になることが指摘されている。近年、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽を代表疾患とする長引く咳(慢性咳嗽)を訴える患者さんが増加しており、原因として環境中化学物質の関与が疑われている。本研究では、黄砂中環境化学物質と慢性咳嗽の症状の関係を調べることを目的として、黄砂期間中の患者調査と化学物質モニタリングを行った。患者調査は、金沢大学附属病院の呼吸器内科外来を受診している気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽の方を対象とした。同意を得られた104名に咳日記と鉢アレルギー日記を配布し、毎日の自覚症状の記入を依頼した。黄砂日の判定は、富山におけるライダー観測データ(国立環境研究所の杉本伸夫先生よりデータ供与)をもとに行った。大気中物質モニタリングは、同病院屋上にハイボリュームサンプラーを設置し24時間ごとの大気中粉塵を捕集した。粉塵中の芳香族炭化水素類および金属類を測定した。また、同病院屋上でダーラム法により花粉飛散量を測定した。2011年1月から6月の調査期間中、黄砂日が連続する黄砂期間が5回みられ観測された。93名の咳日記、81名の鼻アレルギー日記を回収し、黄砂期間とコントロール(非黄砂)期閥のそれぞれの症状を比較した結果、黄砂期間では咳頻度、咳強さ、たん量、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、眼のかゆみの症状の上昇が見られた(p<0.05)。鼻に関する症状は黄砂と花粉両方の影響が示唆された。咳頻度と咳強さは黄砂の影響が強く見られたため、その病因についての詳細な解析が今後、必要と考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
計画通り研究を遂行でき、新しい知見を得て、来年度への基盤を得られたたため。
来年度も臨床疫学と黄砂および化学物質モニタリングを行う。今年度の結果をもとに、今年度の調査に参加された方に加えて、新たに同意を頂き、参加人数を増やす計画である。粉塵捕集に関しては、今年度はハイボリュームサンプラーの故障で測定不能の日が生じたため、予備機を購入して、来年度に備えている。
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Molecular Cancer Therapeutics
巻: (in press)
Jpn.J.Hyg.
巻: Vol.67 ページ: 287
巻: Vol.67 ページ: 306