公募研究
黄砂中の環境化学物質が、気管支喘息や花粉症などのアレルギー疾患の発症や悪化の原因になることが指摘されている。近年、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽を代表疾患とする長引く咳(慢性咳嗽)を訴える患者さんが増加しており、本研究では、黄砂と慢性咳嗽の症状の関係を調べることを目的として、黄砂期間中の患者調査を行った。前年度に引き続き、第2期、第3期の患者調査を継続した。金沢大学附属病院の呼吸器内科にて、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽のいずれかの診断を受けて通院している成人の方を対象に、アレルギー日記に毎日の症状を記録して頂いた。黄砂日の判定は、国立環境研究所のLIDAR観測データをもとに行い、黄砂消散係数が0.03/km、0.01/km(濃度0.03mg/m3、0.01mg/m3に相当)をそれぞれ黄砂日、非黄砂日の閾値とした。第1期調査の結果、咳、たん、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、眼のかゆみのすべての症状において、黄砂期間に症状を有する人数が、非黄砂期間より増加していた。特に、咳と眼のかゆみの症状においては、非黄砂期間に症状が無く、黄砂期間に症状を有した人が有意に認められ (p<0.05) 、黄砂が慢性咳嗽の症状に影響を及ぼすことを初めて報告した(Higashi et al. Atmospheric Environment in press)。我々の調査では、期間中毎日症状を記録する方法によって、黄砂情報に影響されることが無く、症状変化を捉えることが可能になった。また、気象庁発表の目視による黄砂日ではなく、LIDAR観測データによる黄砂日を設定したことによって、軽い黄砂飛来時の影響を捉えることができた。今後、この調査と解析を継続し、黄砂以外の要因として考えられている大気汚染物質や花粉の健康影響を考慮した詳細な解析が必要であると考える。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Atmospheric Environment
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Earozoru Kenkyu (in Japanese)
巻: 29 (S1) ページ: 212-217
PLoS One.
巻: 8(2):e55289 ページ: 1-12
10.1371/journal.pone.0055289