研究概要 |
本研究は,粒子状物質に含まれるアンモニウムイオン,硝酸イオン中の窒素安定同位体比と元素状炭素中の炭素安定同位体比を高精度に測定し,浮遊粒子状物質の起源推定を行うことを目的としている。特に2次生成粒子であるアンモニウムイオンや硝酸イオンにおいては,それらの前駆ガスから粒子への同位体分別係数を実験室もしくは野外でのサンプリングより算出し,発生源解析に応用することを目指している。 平成23年度は,粒子発生装置の購入が出来ず,今まで採取していた秋田県内のサンプル(粒子及びガス)の安定同位体の分析や解析を進めていった。その結果より,元素状炭素においては冬季に大陸由来の石炭等の化石燃焼による粒子が,日本海側(秋田県)まで到達していることが示された。また硝酸イオンも元素状炭素と同様に,大陸からの越境汚染が疑われたが,結論付けるまでには至らなかった。さらに世界中の石炭を収集し,石炭の炭素安定同位体比の測定を行い,世界の炭素安定同位体比マッピングを完成することが出来た(これらの結果は国際学術雑誌に報告することが出来た。また一部の結果は現在,論文執筆中)。 さらにガスから粒子の同位体分別係数の算出の実験も一部行った。これらの結果は既往の文献とほぼ一致する結果となったが,手法がまだ安定しておらず,来年度に向けてさらに方法の精緻化などを進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
粒子発生装置ではなく,擬似的にガスから粒子化を再現する実験を通して,同位体分別係数を推定する必要がある。そのため,それらの欠点,限界,課題等を考慮しつつ,発生源解析に応用する必要がある。
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