研究領域 | 東アジアにおけるエアロゾルの植物・人間系へのインパクト |
研究課題/領域番号 |
23120705
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松本 淳 首都大学東京, 戦略研究センター, 准教授 (70402394)
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キーワード | 有機硝酸 / 浮遊粒子状物質 / 二次有機エアロゾル / 揮発性有機化合物 / 窒素酸化物 / 大気化学反応 / レーザー誘起蛍光法 / 室内実験 |
研究概要 |
揮発性有機化合物VOCを前駆体とする大気中での二次有機エアロゾル(SOA)粒子の生成過程において、その中間生成物として有機硝酸類が注目されている。本研究では、LIF-NO2を用いた有機硝酸全量計測装置を構築し、SOA生成過程における有機硝酸類の挙動解明への貢献を目指す。今年度は以下の研究を実施した: 1)レーザー誘起蛍光法(LIF)NO2計に熱分解変換装置TDを組み合わせ、有機硝酸全量計を構築した。市販の硝酸イソペンチル試薬を用いた標準ガス試料についてTD温度に対する特性を調べた結果、TDを360℃に設定すれば効率よくANsをNO2に変換・検出することを確認した。 2)本研究では、特に粒子状の有機硝酸の計測を目指す。そこで、フィルタ法とデニューダー法の2通りにより粒子をガスと分離し、粒子成分のみの測定を試みた。テフロンバッグ容器内でのピネン・オゾン・NO混合試料の反応時に生成するSOAを測定した結果、いずれの方法でも有意な信号を捕捉した。低濃度試料を長時間捕集する場合にはフィルタ法を、高濃度の試料を短時間で計測するにはデニューダー法を、使い分けることができる。 3)テフロンバッグ内でのSOA生成実験の結果、15分程度の反応時間を確保したピネン・オゾン・NO混合試料では、2ppbvのNO2に相当する有機硝酸が検出された。一方、反応前の試料、ピネンを含まない試料、フィルタを通過させた試料、では有意な有機硝酸を検出しなかったことから、今回検出された有機硝酸は粒子状であることを確認した。 以上のように、今年度の最大目標である「粒子状有機硝酸類の計測」を実現した。なお、現状の検出下限は0.00037mg/m3(-ONO2換算、60s積算)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、二次有機エアロゾル(SOA)粒子中に含まれる「粒子状有機硝酸類」の包括的計測を実現し、SOA生成過程の解明に活用・貢献することを目指している。今年度は、「フィルタ法」を用いたガス-粒子分離など、当初計画した内容は完了したうえ、「デニューダー法」を用いた連続測定にも挑戦・成功した。このことは、今後の研究遂行に大きく貢献すると期待される。以上のことから、上記区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画にしたがって、今年度までに構築した粒子状有機硝酸全量計測装置を活用し、以下を推進する方針である: 1)計測装置の改良:複数LIF装置による多試料同時計測法により、NO2やANsの同時またはモード切替による測定を試みる。また、熱分解装置TDの温度設定に対する成分検出特性等を詳細に調べ、最適化する。 2)バッグ反応実験例の蓄積:ピネン以外のVOC成分についても反応-粒子状有機硝酸全量測定を試みる。成分ごとに、有機硝酸全量の検出特性をラジカル反応特性と比較・検証し、SOA生成過程について検討する。
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